2021-05-08

旧作ファンの財布を当てにしつつ神経を逆撫でしてしまう作品たち

ブギーポップは笑わない(2019)

キャラクターデザインを原作イラストから大幅に変更。それ自体も反発を生んだが、デザイン確認など連絡の欠如により、アニメ化発表直後にツイッター上で原作イラストレーターを激怒させてしまう。これにより放送開始前から作品の印象が致命的に悪化した。

小説原作とはいえライトノベルであることを考えれば、たとえ変更後のデザイン自体は良くても、オリジナルから変えることで読者が大いに戸惑うのは簡単に予想できるだろう。であればせめて、原作イラストレーターからは「僕の絵とはちょっと違いますが新しいデザインも素敵ですね!応援してます!」ぐらいの当たり障りのないコメントを引き出すよう根回ししておくべきところだが、現実には全く逆の結果となってしまった。

魔術士オーフェンはぐれ旅

ストーリー自体はかなりの省略があるものの概ね原作を踏襲しているが、全体的に「90年代のラノベファンタジーってこんな感じでしょ?」という先入観・偏見で作られているように感じる。予算などの限界があるにしても、原作の雰囲気を理解してできる限り再現しようと努めたのであれば、ここまで露骨にチープな印象になるとは思えない。

コミカルなシーンの演出と、そこで流れるベッタベタなBGMの脱力感は特にひどい。原作読者以外も一見の価値あり。

東京BABYLON 2021

制作中止の決定的な理由は衣装デザイン盗用の発覚だが、それ以前からキャラクターデザインには不満が集まっていた。特に、メインキャラクターの一人である桜塚星史郎の「肩幅」が原作に比べて非常に狭くなっていることが槍玉に上げられた。

舞台を現代に移したのだからバブル期風のパット入りクソデカ肩幅では通用しない、という常識的な判断には頷けるところもあるが、キャラクターのアイデンティティにも関わることなので単純にアップデートすべきとは言えない。

閃光のハサウェイ

主人公ハサウェイ役の声優を、アニメ的には前作に当たる逆襲のシャアでの佐々木望氏から変更。しかし、(原作小説には登場しない)アムロは古谷徹氏のまま。

先日、劇場限定版BDの特典として佐々木望氏による原作小説の朗読CDが付属すること、そして本編でもゲイス・H・ヒューゲスト(原作では特に重要ではないキャラクター)役で佐々木氏が出演することが判明した。これを、出番があってよかったと素直に喜ぶか、エクスキューズに過ぎないと冷ややかに見るか、余計にひどい仕打ちだと眉をひそめるかは人によるだろう。

まとめ

これらの作品に共通しているのは結局のところ、「旧作・原作・前作に対するリスペクトの欠如」ということに尽きるだろう。

もちろん内心のことなので、実際に作り手が旧作・原作・前作をどう思っているのかは、作品を見ただけで正確に分かるものではない。問題なのは、客の目に「リスペクトが無い」と映ってしまうような軽率なやり方をプロが取っていることだ。

逆に言えば、心の中で旧作・原作・前作やそのファンを思いっきり小馬鹿にしていようが、それを表に出しさえしなければ誰からも文句は付かない(付けようがない)。言い方は悪いが、せめて外ヅラぐらいは綺麗に取り繕ってはくれないものだろうか。ファンから搾り取りたいんでしょ、お金?だったら、もっと本気で搾取する姿勢を見せてくれ。

個人的に似て非なるものだと思っている例として、先日サービス終了が発表されたサクラ革命がある。あれは、サクラ大戦シリーズの一環ではあるものの、タイトルとしては一応新規となる(○○サクラ大戦でもサクラ大戦✕✕でもない)。舞台も、旧作と直接繋がった世界ではなく時代設定的にも50年以上未来で、既存キャラの登場は無し、戦闘手段も搭乗型ロボットからパワードスーツ状のドレスへ……と、大胆な刷新が行われている。

「サクラ」の名を冠している以上、旧作ファンを全く意識していないということはないだろうが、新しいファンを獲得することの方に重点を置いているのは間違いない(正統な続編としては新サクラ大戦が存在している)。その挑戦の結果があれほどの大敗となったのは横から見ているだけでも残念だったが、しかし企画としての潔さはあった。

別にサクラ革命を見習えと言いたいわけではない。しかし、旧IPを掘り起こす際に、老オタクのノスタルジーを刺激して確実に小金を巻き上げたい……でも念のため若いオタクにもアピールできるものにしたい……という腰の据わらない態度では、虻蜂取らずに終わる可能性が高いのは事実だろう(奇跡的に両立させている例もあるにはある)

釈迦に説法だろうが、業界の方々には個々の作品について「誰に売りたいのか」をしっかり煮詰めてもらいたい。業界とオタク、お互いの幸福のために。

  • 細かいところで「こいつらは原作へのリスペクトが無いに違いない!」と決めつけてる面倒なオタク。 こういうオタクのせいで製作側は「昔からのファンがついているコンテンツはコス...

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