2021-04-26

テレワークへの対応に見る「ハイコンテクスト文化」「ローコンテクスト文化」の反応

コロナ禍をきっかけに働く環境は大きく変わりました。現在オフィスの在り方についてどうお考えですか。いままでの状況が全てひっくり返る変化というよりも、「いつかはこうなる」と予見していた世界に一気に近付いたと考えています

 今回のコロナ禍は「人間の慣習」が途切れる出来事でした。物理的にオフィスに行けなくなり、自宅で内省する時間が増える中でそれぞれが「オフィスがなくても仕事はできる」と認識したはずです。これまでの慣習を断ち切って「考える時間」ができたのが2020年体験だったと言えるでしょう。

 文化人類学者のエドワード・T・ホールによれば、日本言語化されない「空気」や「雰囲気」を察することを重んじるハイコンテクスト文化とされています。他方、欧米は明文化しなければ相互理解がかなわないことを前提としたローコンテクスト文化です。ローコンテクスト文化におけるコミュニケーションルールを重んじなければ成立しません。

 どちらがテレワークに向いているかというと、「空気」ではなくルールを重んじるローコンテクスト文化でしょう。ローコンテクスト文化で、時間場所選択できるABW(Activity Based Working)を導入する場合ルール提示すれば都合に応じて個々が判断しまから、「そのルールなら自分は家で働く」と自然に受け入れられるわけです。

 ハイコンテクスト文化を持つ日本場合は、ルール提示しても「とにかくいったん出社をして、同僚や上司相談しながら働き方を調整しよう」と考え、誰から強制がなくてもほとんどの人がそう動きます。こうした働き方は「業務内容の無限定性」に大きく関わっていますが、ルールが決められておらず、一人一人の業務内容はあいまいです。すると個々のメンバーが全体の空気を読みあわなければなりません。結果として常に一緒にいないと空気が読み切れないために不安になります。そのためオフィスに来て常にお互いの様子を見るわけです。在宅勤務やテレワークルールがあっても、文化的には実践できなかったのが日本

最もイノベーティブなシリコンバレー日本型の文化だった!? コロナ禍をきっかけに、そうした日本的な働き方が大きく変わったわけ

日本場合ベテラン世代テレワークに苦労する一方で、仕事プライベートを切り分けることを好む若い世代コロナ禍の働き方を歓迎する傾向にありました。このギャップを埋めるには、新しい働き方のルール文化必要です。さまざまな世代が同じように働きやすさを求めるなら、ローコンテクスト文化を受け入れていく方がよいでしょう。一方で、イノベーティブな活動には、ハイコンテクスト文化の方が相性がよいと考えられています

 ここが面白いところなのですが、コロナ以前に最もイノベーティブな働き方をしていたのは、企業敷地内に従業員を住まわせるような、生活仕事が一体となったシリコンバレー流の働き方だったという点です。今後の働き方も完全にテレワークになるわけではなく、イノベーティブな仕事をする際にはオフィスに集まることになるでしょう。

私たち富士通2020年7月、「Work Life Shift」というコンセプトを掲げ、自ら働き方を変えることを宣言しました。「Smart Working」(最適な働き方の実現)、「Borderless Office」(オフィスの在り方の見直し)、「Culture Change」(社内カルチャーの変革)の3つを柱に取り組んでいます

 今回の対談で個人的山下さんにうかがいたかったのは、「オフィス環境を変えることで、イノベーティブなアイデア創出にどうつなげられるか」という点です。

人をクリエイティブにするには、「作りかけ」「未完成」を感じさせる、ある種のラフさが重要です。整い過ぎる環境人間を緊張させますアクティブに人を動かし、コミュニケーション量を増やすには、緊張させず、人が空間に介入しやす環境を作ることがコミュニケーション活性化につながり、イノベーションを起こしやす環境を作ると言われていますシリコンバレーかいわいではよく「空間をハックできる=ハッカブル」と表現するのですが、空間にはコミュニケーションデザインする力があります

 皆が熱気を高め、「自分はこのためにこの価値観のために仕事をしている」と感じられることが重要です。空間から会社カルチャーを感じ取れるようにする、言い換えれば、オフィス組織価値観を伝達するメディアになる

当社の場合も対面でディスカッションや共創する場としてのハブオフィスと、高速なネットワークで快適にメンバーとつながることができるサテライトオフィスがあります私自身も、実際にクリエイティブものを生み出そうとする場合は、やはりリアル場所必要だと感じています。みんなで議論して、ホワイトボードに書く。それができないだけで、仕事を進めにくいと感じることは多いですね。

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