テストは大体100点だった。
ただ友達付き合いが壊滅的に下手で、中学に入ったころから学校に居場所がなくなり、年単位の不登校になった。それはここでは省略する。
高校からは真面目に登校し、友達もできて、勉強も遅れを取り戻すことができた。
高3になり、大学受験に向けた模試では毎回旧帝薬学部が狙えるレベルだった。
緊張して臨んだセンター試験は9割。正直、自分スゲエと浮かれた。
でも待てよ、と立ち止まった。
もし落ちたらどうなる?
学校や塾で授業を聞くのは苦ではないが、一人で勉強するとどうしてもすぐネットに手が伸びて1時間2時間が溶けてしまう。
コツコツ一人で机に向かうことが本当に苦手だった。
だからもし浪人すると絶対にネット漬けになり、ダメになってしまうという確信があった。
親元から遠くなるのに不安を覚えたから、地元から出なかった。(これは正解だった。のちに引きこもりになり生活習慣も精神的にも不安定になったので毎週実家に帰って会話する相手がいてかなり救われた)
当然合格し、駅弁大学に入学。どうやら50人以上の学科で入試の成績が一位だったようで、表彰もされた。
入学するとオリエンテーションやサークル勧誘で異性からたくさん話しかけられた。
新入生の女ならちやほやされて当たり前なのだが、こんな私でもリア充になれるかも?と少しだけ夢を見させてもらった。
しかしその少し後に、私は衝撃を受けた。
どこがわからないのか考えても、一から十まで全部としか言いようがない。
何せいきなり理解不能な単語や概念が当然のもののように出てきて、それを前提にどんどん講義が進んでいく。
その専攻は高校では好きな科目だったはずなのに、しょっぱなから「高校までで習ったことは嘘です。本当はこうなっています(意味不明な説明)」と打ち砕かれる。
極めつけは実験科目で、実験器具を目の前にして何をどうしたらいいのか教科書を見てもまったくわからず固まってしまい、「あ、これ無理だ」と確信してしまった。
授業にもついていけないし、人間関係も、最初は同級生と仲良くできたものの一歩踏み込んだコミュニケーションが取れずに徐々に距離ができていった。
次第に私は大学に行かなくなった。一人暮らしのアパートに引きこもってネットとゲームに明け暮れ、昼夜逆転生活を送るようになった。
土日や長期休みには実家に帰ったりアルバイトをしたりして、そこでだけ人と会話できた。
このままではいけない。なんとかしなければと学生支援センターのあたりをブラブラ歩いていると、入学後でも専攻が変えられることを知った。
これだ、これしかない。
私は文系学部の試験を受けた。普通の入試と似たようなもので、英語と小論文があったと思う。
無事に合格し、心機一転、同じ大学で二度目のキャンパスライフがスタートした。
この学部でも専門科目はわけがわからなかったが、前の専攻とは違ってまだ理解の糸口がつかみやすかった。
また文系マンモス学部なので講義で人と関わることはほぼなく、かつ編入生という明確な立場の違いがぼっちの安心材料になって、余計なストレスを抱えずに勉強できた。
あとはここで躓いたら二留か最悪中退するしかなくなるので、授業も試験も頑張るしかなかった。
幸いなことにその学部は卒業要件がゆるく、ゼミはあるものの卒論すら不要だった。また、私が選んだゼミはゆるさで有名なゼミで、ぼんやりとしたテーマでなんとなく発表する程度で許されたのも運が良かった。
かくして引きこもりぼっち大学生は、一留したものの専攻移動という手を使ってなんとか卒業までこぎつけたのだった。
ちなみに授業と並行して資格試験の学内講座も受けたが、そちらは教えるプロが試験突破を目的とした講義をしてくれるので非常にわかりやすく、自分が得意だった大学受験までの「お勉強」と似ていた。
大学を卒業して長いこと経つが、いわゆる優等生の方だった自分が大学でなぜあそこまで躓いたのだろうとたまに考えることがある。
1.大学で講義をするのは研究のプロであり高校までの教えるプロとは異なるということ。
2.高校までの参考書パラダイスと異なり、底辺大学生に一から理解してもらうための参考書が乏しいこと。(当時の私も一生懸命探したが自分の専攻では見つけられなかった)
3.高校までは「AはBのためCになる」のようなシンプルな絶対的事実をいくつも積み重ねて理解を深めていくが、
大学ではAからZやそれ以上のあらゆるパターンが先に出てくるばかりで絶対的事実に辿り着かず、「結局確実に言えることは何なの?どこから覚えたらいいの?」と地に足がつかないままどんどん先に進んでいくこと。
(よく考えたらお勉強ではなく学問や研究の世界なので当たり前である)
など色々あるが、結局、答えの用意されたお勉強が得意だっただけで、答えのない学問を追究すること、つまり大学進学自体がそもそも向いてなかったのだろう。
高校までのお勉強と大学で学ぶことは全く異なるということは全高校生に知ってもらいたいと思っている。
ここまで読まれた方は、私は発達障害だと思うかしれない。診断は受けてないが傾向があることは自覚している。
しかし「高校までの勉強が余裕だったのに、大学の授業が全く理解できなかった」という話は発達障害界隈でもあまり聞かない。私だけなんだろうか。
高校までの教科書はカッチリしているけど、大学なった瞬間適当に勉強せえや的になるからなぁ あやふやさを受け入れて後から体系化していくというか、そういう曖昧さが苦手だったの...