そういう日がある。車を出す前から舌と胃から「今日はラーメンだろう」「今日は焼き魚定食だろう」と語りかけてくる。
しかし腸は荒れていた。朝の便のキレも悪く、ダークマターが蠢いている事を脳は察知していた。
やれやれ、そのやさしめのラーメンを選ぶのは私じゃないかと脳は言った。
俺がいくラーメン屋は激辛が好物なこともあり殆どが刺激の強いラーメン屋だった。つまり運転しながら探すしか無い。
13時にクライアントの事務所に向かわなければならない。時刻は12:03。迷ってる暇は無い。
いつもは入らないラーメン屋に行くことを決めた。入店時点で12:05。ゆっくり楽しめそうだ。
ラーメン屋は北海道ラーメンがウリで、3種の味噌をメインに、しょうゆ・しおというラーメン屋らしいメニューだった。
私は味噌ラーメンが子供の頃から苦手なのだが店の一番のウリは濃厚味噌ラーメンだった。
昔の私なら気にせず塩ラーメンを選ぶところだが、最近味噌汁もちゃんと飲めるようになったので、とりあえず濃厚味噌やさいラーメンを頼む。味噌とやさいという組み合わせなら最悪野菜のブーストで麺が食える。
店員がいきなり聞いてくる。イレギュラーだ。少し考えるが大盛りサービスしてくれるのに断るのも申し訳ない。自分の体型はわりとデブなので「いやいらないです」というと見掛け倒しに思われるのもいやなので「じゃぁ大盛りにしてください。」と伝える。
店内はなかなか賑わっている。
ラーメンなら遅くとも15分ぐらいで来るだろう。
そう思っていたのが間違いだった。
20分たった。
一つ開けて隣に座ってたつなぎをきた兄ちゃんにラーメンが届く。
「大盛り味噌です。」
…でかい。自分がいつも行く二郎リスペクト店の大盛り(麺の量500g)サイズぐらいの器が着丼する。
同じ丼が目の前の置かれる。腸は荒れている。胃も「ちょっと聞いてないです」という顔をする。
覚悟を決める。
心のなかで唱える。「15分かけずに食える。」これはプライドだ。「昔の俺はこのサイズを10分も掛からず食べていた。」10年前の俺と今の俺。「今の俺のほうが食える。」38歳の俺。「デブの内臓は老化しない。」
箸を伸ばす。
まずは冷静に野菜と麺の上下関係を反転させる。30歳ぐらいの時に読んだ本で「食事は野菜から先に食べるのが良い」と書いてあった。だがラーメンに置いては違う。
麺が伸びる前に食うために野菜は後回しでいいのだ。そもそも麺は小麦なので野菜。野菜はヘルシーだ。
時計は見ない。
ひたすら麺を啜る。
啜る。齧る。そして飽きたら判断せずテーブルの調味料を使う。ラーメンは刹那だ。
啜る。齧る。俺は15分かけず食える。
啜る齧る。
気がつけば丼の中は空になっていた。
時計をみる。
12:44:55、56、57…
打ち勝ったのだ。
俺は大盛りラーメンを15分かけずに食える。胃は働く。腸は悲鳴をあげる。
危ない便意と共に。
さっきのレズが彼女出来た話よりもっと長いのを頼む!
もらす続きはどこ?
頑張りましたね