社会人一年目、配属初日の朝、私がしたことはライナーセット券の申込だった。配属が分かるまで茶色の切符を毎日購入するのは大変だったので、無事に細長い水色の券を手にした時はとても嬉しかった 。
社会人になってから、今日までずっと湘南ライナーに乗ってきた。けど、それも今日でおしまい。
先輩方に比べると私が乗っていた期間はとても短い。それでも思い出はたくさんある。同じ号車に乗る人達には勝手にあだ名をつけて、勝手に心の中で挨拶をしていた。
毎朝同じメンバーが同じように並んでいるのを見る。それが私の朝の楽しみだった。
でも、昨年の4月からその様子は変わってしまった。コロナでテレワークの人が増え、ライナーセット券の購入者は大幅に減ってしまった。
ライナーセット券デビューした頃は、ドナドナと呼ぶに相応しいほどの満席だったのに、今じゃ四人掛けの席に一人。
ドナドナと呼ばれていたのが嘘みたい。
優雅な出勤はストレスなしで最高だけど、ドナドナしていた頃もあれはあれで楽しかった。
最終日だからと言っても、ライナーセット券の号車は何ら変わらない。いつもと同じように時間が過ぎ、いつもと同じように終点の東京へ向かっていく。
今日で終わるだなんてとても信じられない。車内アナウンスも通常通り。これはこれで最終日らしいのかもしれない。
小学生の時、帰りが遅い父の代わりに母と一緒に夕方駅までセット券を受け取りに行った。
高校生の時、母が買ってくれた当日券を使って大学受験の会場まで緊張しながら向かった。
大学生の時、卒業式に向かうために袴姿でおはようライナーに乗った。
社会人になる前にもお世話になっていて、社会人になってからは毎日毎日お世話になった。