2021-02-15

ウィンナーレンジで温める

今日は飲むぞって決めて、ちょっと良いウィンナーを買って帰る。

家に着く、カバン仕事着をてきとうに放り投げて、まずは昨日の晩御飯の残りをレンジで温めながら、気温差でほのかに水滴をまとった缶ビールを流し込む。

一日の疲れがどっと出てくるようで、休息以上に解放感に満ちた心と体が栄養快楽を欲するのが分かる。

チン、という小気味良い音で一つ目のつまみが出てくる、昨日作った文字通り豚バラ肉じゃがいもだけの、肉じゃがが、盛大な湯気と醤油香りをまといながら、食卓と呼ぶにはあまりに粗末な折り畳みテーブルの上に鎮座する。

匂いだけでビールをもう一口、甘めの味付けの豚バラ肉を追い掛けるように口に放り込み、さら駄目押しビールを流し込む、一呼吸終えて出た溜め息は演奏を終えたオーケストラにおくる拍手同義である

あっという間に無くなったいぶし銀スーパードライの空き缶をくしゃりと握り潰し、引き換えにビニールから取り出したストロングゼロ ダブルレモンのプルタブをこじ開ける。

辺りに漂う先程とは違う濃厚なアルコール匂いに、肝臓が嫌でも引き締まる。

ここで先ほど買ったウインナーの登場だ、レンジ対応の薄汚れた引き裂いた袋からこぼれ落ちるウインナーを落ちないようにだけ積み上げる。

それは人為的盛り付けではなし得ない、燃え尽きる前の一番に火が盛り上がるキャンプファイヤーの崩れかけの土台のような、雄々しさすら感じさせる自然に出来た肉欲を満たす櫓だ。

そのままレンジに投入し、タイマーをぐるりと回す、燃え尽きるまでの時間3分、芳ばしい肉の匂いだけでもう一口酒が飲める。

早くも500ml缶の半分が空いたレモンサワー、キツいアルコールの味を塗り替える強烈な肉の味に涎が止まらない。

レンジから再度鳴るチンという音は、人生を掛けて戦う男たちをリングに呼び戻すゴングのものだ。

ウインナーを噛る、硬い、なんだこれ。

レンジウインナーを温める最適な時間分からん

俺は敗残兵、俺の休日無名選手が決めたイタズラなバックドロップ一発で終わってしまったのだ。

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