2021-02-10

人生が進捗しない。

働くことを止めてから、はや数か月が経とうとしていた。

小説を書くなどと嘯き苦し紛れに書き始めた原稿も、誰にも責め立てられずただ時間ばかりが過ぎて遅々として進まない。今ではただ実体のある焦燥感の源と化している。

文才があるんだなんて言われ、それを真に受けて売文屋になろうとした。なれなかった。一昨年から昨年にかけてそのことは十分確認したはずだ。

では何故文章から逃れられないのか。書かずにいられないからだ。

これはクソみたいなものだと思う。

トイレみたいな臭い箱に閉じ込められるなんて誰でもご免だが、それでも内臓汚物が圧迫していることの方が遥かに不快から、自らあの不衛生な空間に進んで入ろうとする。

じゃあ今は便秘みたいなものなんだろう。だとしたら苦しくて当然だ。だけど文章はクソではないので、浣腸をする穴なんて無い。

昨年、肝炎を患い医者から酒を飲むのを止められた。

夜は眠剤も飲むし、他にも色々なものを食っているから、いずれにしても酒なんて飲むべきじゃない。

それでも今日浣腸の代わりに一杯だけ口に入れた。まずくて後悔した。

けれど少しだけ正気が戻って、一つだけ思い出したことがあった。

部屋の片隅に雑然と置かれた段ボール箱、その中には職場から持ち帰って来た文房具メモ帳カレンダーが入ったままになっている。

その奥の奥、そこを探ると、やはり思ったとおり、吸いかけのタバコが入っていた。

デュオメビウス

数年前、女友だちと二人で酒を飲んだあとで買ったのだった。

二人で何本か吸ったあと、女友だちが「これ、持っていて。次に飲むとき持ってきてね。」と私に手渡したものだった。コロナ禍が来て、「次に飲むとき」が来ないまま疎遠になった。

キッチンのコンロで火を点けると、少ししけった臭いがした。

人生が進捗しない。だけど私は着実に老いていて、少しずつ色んな可能性を尻の穴から垂れ流し続けている。

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