2021-02-10

水道について

これは半分釣りです。業界関係といっても日が浅く、決して専門に勉強しているわけではないのです。ここからより詳しい増田がでてくることを期待します。

最近水道関連で立て続けにニュースがありましたね。浄水業界に少しだけ関わっているのでちょっとだけ。

まず、水道事業は古くから各自治体が主導であり、地域ごとに歴史文化やしがらみがあります。なのであなた地域では当てはまらないケースは多々あると思いますし、自分の知るものマイナーだってケースもあるはずです。

水を生産する浄水場においては、主に以下の薬剤を使うのが一般的だと思います



pH調整剤

濃硫酸苛性ソーダ水酸化ナトリウム)。今回の事件(https://gigazine.net/news/20210209-hacker-poison-water-supply/)で入れられたのはこのph調整剤の一つ。硫酸アルカリ性のもの酸性へ、苛性ソーダ酸性アルカリ性中和させます濃硫酸というとどこぞの高校生探偵を思い浮かべやすいのですが、実際に添加されている量は僅かなので人体に影響はありません。もちろん水酸化ナトリウムも微量なら問題ないのですが、今回のハッキングのように大量に添加されると危険です。

凝集剤

PAC(ポリ塩化アルミニウム)。これを添加すると効率的に泥などの汚れが凝集して塊になり沈殿します。水道水は法律によって厳しく規制されているので、濁り(濁度)が高くなると大問題となります

消毒剤

次亜塩素酸ナトリウムなど。これによって細菌等を殺します。塩素と呼ばれるものの元です。水道法によって蛇口からでる遊離塩素の濃度は0.1mg/L以上となっています

さらにここに臭気等取り除く粉末活性炭を時期によっていれたり、オゾンで殺菌もします。

苛性ソーダについてですが、通常の川の水はアルカリ性によっているため濃硫酸だけで済ますケースが多いと思います自分の知る浄水場でも苛性ソーダは単に保存されているだけでずっと使われていません。硫酸が過剰に添加されてしまうケースでの中和が主な目的かと思います。仮に川が酸性によっても、次亜塩素酸ナトリウムアルカリ性なので中和されてしまうでしょう。

この冬は自分地域で雨が少なく、川のアルカリ度が高い傾向にあります。なので硫酸活躍しても苛性ソーダはまず使われないでしょう。事故がなければ。

そんなに薬品入れて大丈夫

大丈夫です。水に対して極々微量ですから薬品は、主に濁りのもとを取り除き細菌微生物を殺してきちんと飲める水にするためのものです。これがなければ日本の多くの家庭では水道水をそのまま飲めなくなります

水道水は法律によって厳しく規制されています殆どの人には、味・匂い・濁り・残留塩素大事かと思います。そこに細菌微生物、各種化学物質等の基準が設けられています浄水場ではほぼ毎日検査をして基準にあっているか確認しており、安心して飲めるように配慮しているとのことです。

この基準国際的にはかなり抑えたものらしく、それで健康に害がでるなら別な要因を疑うべきかと。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/kijunchi.html

大昔は残留塩素がかなりある状態で送り届けていたそうです。しかし、いまは味や臭気を気にする人が増えたこともあって、そのままでも美味しく飲めるようにだいぶ薬品の量を変えている自治体が多いそうです。もちろんそれでも水質基準クリアしています洗濯に使うような水でも平気で飲めるのはかなり恵まれていると思います

ハッキングを受ける可能性は?

わかりませんが、日本の浄水設備の一部はリモートになっていると聞きます。浄水事業はどこも人手不足なので設備の一部は民間委託したりリモート常態化するでしょう。お金もなく設備が古いままなケースも有り水道管の破裂は今後も増えるでしょう。水質測定装置故障しても直せなかったりすると大変です。管が破裂したところの職員は復旧まで徹夜だそうです。ハッキングよりそちらのほうが心配です。


水道水はどうやって作られているのか

主な水道施設は「取水場」「浄水場」「配水場」なのですが、わかりやす浄水場簡単に。

設備能力浄水場ごとに千差万別です。近くの浄水場同士で全く違う浄水設備なんてのもみますそっくりものを探すのも大変かと思います自治体による運営が基本なので仕方ないんです。

例えば以下は北千葉浄水場概要図です

https://www.kitachiba-water.or.jp/site/facility/1035.html

簡単に言えば、水に薬剤をまぜて汚れをろ過して消毒する、という単純な仕組みです。

水源から着水井へ

川や地下水などから水が浄水場に運ばれてきます

そうするとこの着水井という場所に集められます。ない場合もあります

薬品混和池

ここで凝集剤やpH調整剤や消毒剤が投入されます機械で急速に混ぜたり、滝状にして混ぜることもあります接触地と呼ばれるケースもあります別にここだけでなく色んな場所で薬剤を注入するのですが最初に入れるのはここですかね。

フロック形成池・沈でん池

取水場によって水源の汚れはある程度除去されていますが、それでもかなり濁っています。その濁りは凝集剤によってフロックと呼ばれる塊に成長し、沈でん池でゆっくりと沈んでいきます。沈んだ汚れは一箇所にまとまり最終的には脱水されて適切に処分されますフロック形成池は縦移動か横移動のどちらかのケースが多いようです。ゆっくりと長距離を移動することでフロックは成長します。沈でん池の中には傾斜板という斜めになった大量の板が配置されており(ない場合もあります)、そこを通過する過程フロック比較的澄んだ水と分離していきます

見学してみるとわかりますが、単に水を流しているだけでよくここまで汚れが落ちるなと感心します。

高度浄水処理施設

ここは匂いや様々な有害物質を取り除く場所です。オゾン生活性炭等によって、匂い物質トリハロメタン等が取り除かれます。この高度浄水施設は急速濾過池の前後どちらかに設置されているケースが殆どです。北千葉は急速ろ過の前段階で処理していますね。高度浄水処理施設自体がない場合もあります

急速ろ過池

殆どの浄水施設にはこの「急速ろ過池」があり浄水施設の要です。ようは砂や砂利を使って水をろ過する装置です。重力式といって水を上から注いでろ過するのが一般的だと思います。浄水施設航空写真で見たときに並んでいるどでかい四角形の水槽の半分はこの急速ろ過池です。残りの半分はフロック形成池や沈でん池。

急速ろ過池には色んなタイプがあって、機械でぐるぐるかき回す奴もあるそうですがメンテナンスが厳しいとか。

急速ろ過池と反対に緩やかに濾過するのが「緩速ろ過方式」。東京都の一部にあるそうです。これは微生物の力を使って広大な土地を用いる古い手法だそうで、今でもやっているところは少ないとか。他にも膜を使ったろ過装置もあるらしいのですが、それはよく知りません。

なお、ブラックエンジェルズという漫画でろ過池に浮いているシーンが有りましたが、あれってまだろ過の前の濁った水なので全然れいではありません。

浄水地

れいにした水をためておく場所です。大抵は地下に埋まっているはず。ここに至るまでに何度か消毒剤が添加されたりします。濾過の過程で薬剤も同時に失活するので。最終的にここからポンプによって配水池に飲水が送られます


全部を通った水は驚くほどきれいです。高度浄水処理を通らなくとも、大抵は薬剤と沈でん池と急速ろ過だけで結構れいになるそうです。もちろん水源や季節に大きく依存するのですが。

でも大抵の浄水処理ってかなり単純な作りで、こんな程度で濁った水を飲めるようになるのか?って思います。でもちゃんと飲めるのは凄いことなんですよ。


水道水が配られる過程

そもそも皆さんが日常的に利用している水道は色々な種類があります殆どの家庭の蛇口からでるのは浄水場で作られた水ですが、実際は浄水場から直接送られているケースはそれほど多くないと思います浄水場で作られた水が各家庭に送られる前に、大抵は配水池(配水場)等に入り、そこからさらに消毒剤を添加して各家庭に給水されています。つまり浄水場工場ではあり、家庭に届く前に卸し問屋である配水池を経由しているわけです。

時々水道管が破裂するケースがありますしか水道管と言ってもその区別は「導水管」「送水管」「配水管」「給水管」と別れています。どれが破裂するかで管轄がぜんぜん違うのです。

導水管は水源から浄水場あいだまで。ここを受け持つところは浄水場とは別なケースが大半かと思います

送水管は浄水場と配水池の間にある管です。浄水場が所有する管です。

配水管は配水池送られる管で、各自治体の受け持ちです。

給水管は配水管から分岐して各家庭に届けられる管です。

去年の年末に発生した千葉富津市水道管破裂事件は、送水管によるものでした。つまり管轄は浄水施設を持つかずさ水道広域連合企業団。地下深くにあるため難航したようです。気の毒に。なおどこの自治体浄水場でも管の老朽化は深刻です。特に送水管は圧力が高くて太い所が多いため、破裂したときリスクも高いでしょう。配水場に水を送れないので断水の範囲が非常に広くなります

残留塩素


浄水場で作られた水が各配水池に送られる過程で、塩素の濃度は低下します。浄水場の送り出した水が0.6mg/Lの塩素濃度だとすると、15km離れた配水池にたどり着くと0.4mg/Lくらいまで低下します。これは管の状況や施設ごとに違ってくるので概算です。水道基準的にはそれで大丈夫ですが、そこからさらに各家庭に配るため、配水池を管理する自治体によって改めて消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)が添加されるようです。なので「浄水場に近いと塩素が濃い」は必ずしも当てになりません。自治体場所によります。単純に配水池から遠いほど残塩は減るでしょう。

水道民営化すべきか


水道事業お金になりません。そんなところに民間がくるメリット全然わかりません。優秀な人を沢山雇って送水管をどんどん改修して計器を新しくしてトラブルにも即時対応してくれるならいいでしょう。でも水道料金が高くなるのは否めません。皆さんの飲料水公務員の安月給(たぶん)で支えられています



苛性ソーダ事件水道水に多くの薬剤が入っていると知った人は多いはずです。水に携わる人からすると、水道水は工業製品と言っていいと思います。どの過程でも水質には気を配っていますし、薬剤やオゾン活性炭をたくさん使います。その上で安全でおいしい水を安価供給するのって凄いと思うんですよね。管理している人たちは大変でしょうけど。

大学工業を習っている人は、地元水道事業に携わるのも手かと思います

もう一度いいますが、水道水の工程自治体によって千差万別なので今いったことが全てではなく、間違いも当然あると思います

いまは多くの浄水場見学を見合わせ中ですが、非常事態が解禁されてコロナ収束したなら再開されるかもしれません。

そうしたときにそれぞれの浄水場や配水池等の違いを見比べると、地域毎の特徴がわかって面白いと思います

勉強がてら書いてみました。

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