私も一度言ってみたかった!って書こうと思ったら元記事消えてるじゃん。引用とかできなくなってしまったけど書きました。
10年前くらいまでニッチな業界でサポセンを10年務めてました。
大体はトラブル対応なので、お客様からの限られた情報で原因までたどり着くため聞き出す能力が自然と身についた感じです。
一応、傾聴のトレーニングは受けたことがあって、これから書くこと全てのベースになっています。
・傾聴とは
それらを掘り下げるとまたややこしい話になってしまうので、ここでは簡単に「共感」とします。
・聞き上手ってなんだ
私の思う聞き上手というのは、つまり共感上手だと考えています。
えー。なんか思ってたのと違うって人がいたら、ここから先は読んでも意味がないかも知れません。
確かにそうかも!って思えた人は先にお進みください。
なぜ共感上手が聞き上手なのかと言うと、大半の人は、話をするときに伝わっているか不安を抱えているからです。
私の体感では9割の人が話をするときに不安を抱えていると感じられました。
あくまで、不安を抱えているだけであって、不安が表面にあらわれているとは限りません。
断定表現を多用しているからといって、その人が自信に満ち溢れているかと言うと別の話です。
むしろ、不安を隠すためにあえて断定表現を用いる人のほうが多いのではないでしょうか。
いわゆる話し上手の人も、特に訓練でそれを培った人のほとんどが、自分の話が伝わっているかどうか不安を抱えていると言えます。
逆を返せば、伝わっているかどうか不安に感じるからこそ話し上手になる訓練を受けるとも言えます。
つまり、聞き上手の目的の一つは、この、伝わっているかどうかの不安に共感して、払拭してあげることと言えるわけです。
ちなみに残り1割の内訳は、相手に伝える意思がなく一方的に話し続ける人と、本当にただ単純に話をすることが大好きな人でした。
ここでは具体的なスキルを説明します。といっても、スキル自体は本当にシンプルで、誰にでもすぐにできると思います。
1.相槌
相槌です。それ以上でもそれ以下でもありません。
うん。とか、そうだね。とか、確かに。とか、なるほど。とかです。
バリエーションがあるに越したことはありませんが、うん。だけでも十分です。(サポセンのときは「はい」でした。)
まずは相手が話したいことを全て話させることが、共感にとってとても大事なことだからです。
「この人は自分が話したいことを全て受け入れてくれた。」
ただし、相槌をしていればよいというわけではなく、できる限り相手を見て、姿勢を正し、的確なタイミングでの相槌が大事です。
特に興味もない話に仕方なく付き合って適当に相槌だけ打ってたら相手の話がいつまでも終わらなかったなんて経験はある人もいると思います。
それはある意味では、正しい傾聴に近づいていたと言えるわけです。
ただ、これだけではただいたずらに話を長く引き出すだけになってしまいます。
残る2つのスキルを効果的に用いることによって、話の核心に迫ることができます。
2.伝え返し
聞き慣れない言葉かも知れませんが、伝え返しとは、相手の会話のキーワードを、こちらの言葉として相手に伝え返すことです。
例えば「聞いてよ!今日すごいことがあったんだよ!」と言われたとします。
ここで、相手に聞いてほしい内容とは何かを考え、その言葉を伝え返します。
ここでいうと、「すごいこと?」という感じです。
「最近、疲れが取れないんだよね」なら、「疲れが取れないの?」
「ちょっと辛いことがあってさ」なら「辛いこと?」などです。
難しく考える必要はなく、相手の聞いてほしそうな部分をただ繰り返すだけで十分です。
しかし、相手に聞いてほしいこと=話の核心へと近づくヒントだと考えれば、伝え返しを効果的に繰り返すことが核心に迫るための一番の近道であるとも言えます。
ちなみに、普段思わずやってしまいがちなことは、脊髄反射でのお説教です。
「会社辞めたいんだよね」に対し、「会社辞めてどうすんだよ。」
「最近、疲れが取れないんだよね」なら、「お酒のみすぎなんじゃないの」
「ちょっと辛いことがあってさ」なら「誰でも辛いのは一緒だよ」
こんな返され方をしたらそれ以上何かを話したいとは思えませんよね。
話をする側は、その話が受け入れてもらえるかどうか不安です。説教が帰ってきたら、この人には話が通じないとそれ以上話すことを諦めてしまいます。
3.質問
傾聴と聞くと、自分は何かを話してはダメだと考えてしまう人が多くいます。
しかしそんなことはなく、むしろ質問をすることで話がスムーズになることもあります。
例えば「会社を辞めたい」という言葉に対し「何?辞めたいって?何かあったの?」や「トラブル?何か揉め事とか?」といった感じです。
これでは話を聞いてもらえると言うよりは、コンテンツとして消費されてしまいそうな気になってしまいます。
聞き方そのものが大事といえる部分ですが、例えば「会社を辞めたくなるような事件でもあったなら聞かせてもらえる?」など、あくまで目的は共感であり寄り添うことであると伝わる聞き方をしましょう。
それ以外でも、話を理解するために疑問の解決を目的とした質問は一向に構いません。
話の途中で出てきた言葉や出来事そのものが理解できないままに傾聴を進めても意味はありませんので、「それって○○っていう理解でいい?」や「〇〇って言葉が理解できなかったのだけどもう一度説明してもらって良い?」などといった感じで、その時その時にできる限り理解しつつ進めていきましょう。
相手の話を聞く上で、やってはいけない3つのNG行動があります。
癖づいてしまっている人も少なくない内容なので、改めて見直してみましょう。
1.武勇伝
相手の話が始まると、すぐに自分の話に置き換えようとしてしまうことです。
特に、相手よりすごいとマウントを取ろうと、過去の武勇伝を話し始める人が多くいます。
男性に多いイメージかも知れませんが、女性でも割と多くいます。(体感は5分です。)
女性の場合は武勇伝というよりは「私だって」という切り出し方が多いという違いはあります。
いずれにしても、相手の話をすぐに自分の話に置き換えようとすれば、相手はそれ以上聞いてもらうことは無理なのだと諦めてしまうことでしょう。
2.無視、ながら傾聴
よく見られるのは、忙しいという理由で何か作業をしながら話を聞こうとする人です。
たとえそれで話が理解できていたとしても、最初に述べた通り話し手は不安なままです。
その都度リアクションが得られなければ、話を理解してもらえたという共感を得られることはありません。
3.「でも」
これについては本当にただの口癖になっている人がほとんどです。
たしかに、「でも」という言葉は、相手の言葉を遮り会話を自分のターンにするときに便利な言葉です。
しかしだからといっていつでも便利に使っていると、「でも」という言葉が出ただけで、相手は話を理解してもらえていないと感じてしまいます。
「ちょっと辛いことがあって」に対し「まあ、でもね、」と返ってきたらどうでしょうか。
・聞き上手の入り口
これだけでも相手は十分話しやすくなると思いますが、それだけでは聞き上手とは言えません。
大事なことは目的とマインドであり、なぜ聞き上手になりたいのかによって、ここから先に身につけるものが変わってきます。
キャバクラで多くの顧客をつけたり、インタビュアーとして様々な情報を聞き出したり、カウンセラーとして聞くことによって相手の内面の問題を引き出したりとするためには、別途専門的な技術の習得が必要になります。
しかし、ごく身近にいる人間との関係を大切にしたいために聞き上手になりたいという人にとってであれば、私からはこんな言葉を贈ることができます。
これは、傾聴のトレーニングを含む一連のセミナーの中で出てきた言葉ですが、その時から私の中で座右の銘になりました。
要約すると、「あなたが大切に思うその相手は、その人が大切に思うもので成り立っているので、その大切に思うものまでしっかりと大切に思うようにしましょう」ということです。
・「大切に思う」とは
ここで言う「大切に思う」というのは、何も「好きになる」という意味ではありません。
例えばあなたの大切に思う人が自分の嫌いな食べ物が好きだったとします。
傾聴を続ける中で例えばその食べ物が好きですか?と聞かれたとき、どう答えるのがいいでしょうか。
嘘をついて好きですと答えるのがいいのでしょうか。
それとも、そんなものは人間の食べるものではないと、説得を始めるのがよいでしょうか。
もちろん両方とも違います。
答えは、「自分は嫌いだが、それを好きだという相手を受け入れる」ということです。
言葉にするなら「私はたまたま好きではないけど、それを好きだということは素晴らしいことだと思います」といった感じです。(状況に応じてふさわしい言葉は変わります。)
食べ物くらいであればなんとなく理解できるかも知れませんが、例えばあなたの子供が良からぬ噂のある人間と付き合いがあったとしたらどうでしょう。
頭ごなしに「そんな人間との付き合いは辞めなさい!」と怒るべきか、それとも「あなたが言うなら大丈夫」と付き合いを無条件に認めるべきでしょうか。
しかし、ここで大切なことは、「好きと嫌い」や「いいと悪い」「その人との付き合いの大切さ」は、分けて考える必要があるということです。
「私自身はその人のことが好きではない。また、聞こえてくるその人の噂自体もよいとは思わない。ただ、その人との付き合いが大切だと思っていることは認める。そのうえで、今後どうしたらいいかを一緒に考えてみることはできないだろうか。」
もし自分が子供の立場として、こんな言葉を親に言われたらどう感じるでしょうか。
ただ単に、「ダメだ」「やめなさい」「認めない」と言われるより、自分なりにどうすればいいのかを考えられるのではないでしょうか。
私自身が過去、相手を大切に思う気持ちが伝わらなかったもどかしさのほとんどが、この言葉一つで解決しました。
聞き上手とは論旨が少しずれてしまいますが、今でも大切な話をするときには必ず心の片隅においている言葉です。
ただ、私が思う聞き上手な人は、この「相手の大切に思うもの」を見つけるのが上手で、そこから相手の話を広げて掘り下げてとできる人のようにも感じています。
そうしたマインドがあってはじめて、スキルをどのように活用すればよいかの答えが見えてくるのではないでしょうか。
ここまでの例は、わかりやすさを優先するために日常会話に置き換えましたが、なぜトラブル対応に傾聴スキルが必要なのかの説明をしておきたいと思います。
トラブル発生時の人の行動パターンは、大抵次のようなパターンに収まります。
トラブル発生→原因を予測→それに伴った解決手段を要求→責任に応じた補償を請求
ただし、問い合わせに来たときに最初に切り出してくる内容はバラバラで、人によってはトラブルそのものを問い合わせてきたり、原因から話し始めてみたり、解決手段や補償を要求してきたりします。
例えば相手が「新品交換してほしい」と要望を出してきたとします。
もし規定に新品交換がなかったとして、そのままここで「新品交換は規定にないのでできません」といくら説得しても無駄です。
なぜなら、相手は新品交換にふさわしいトラブルが発生していると思い込んでいるからです。
(もちろん、その一言で解決すれば最短ルートなので、一度は口に出しては見ます。)
ここで大切なことは、「相手が考えている、新品交換にふさわしいとする根拠になりえる原因に共感すること」です。
・相手の中では筋が通っている
相手のトラブルに対する思考パターンを図式化すると次のようになります。
これらは頭の中では一直線に並んでいて、その人にとっては筋が通っている内容なのです。
そのため、もしここで違う補償を提案したとしても、それは相手には筋が通らない話になってしまいます。
ここでいう「トラブル発生」の部分は比較的に視覚化されていることが多く、相手と自分とで共感しやすい部分でもあります。
こちらは相手の情報や機器の状況を元に原因にたどり着けたとしても、それが相手のたどり着いた原因と一致しているとは限らないのです。
「別に原因が一致してなくったってトラブルが解決すればそれでいいじゃないか」
でも実はそうじゃないんです。
あるお客様は、トラブルが解決しているにも関わらず執拗に補償を求めてきました。
お客様からヒアリングした結果、すでにお客様側の操作ミスによるものと判断した上で、むしろ本来ならば有償対応で然るべきものを無償で対応したような状況だったにも関わらずです。
その上で、補償できないことの説得を試みましたが、その結果、大事な顧客を失ってしまうほどまでに拗れてしまいました。
その件については今となってはたらればですが、そのことを大きく後悔した私は何が悪かったのかを徹底的に考えました。
そうしてたどり着いたのが「傾聴による原因に対する共感の欠落」でした。
しばらく後に、またも同様の状況に陥りました。
お客様側の操作ミスによるトラブルにも関わらず、執拗にこちら側に補償を求められる状況です。
いくら今回のケースに対して補償が釣り合ってないと説明しても聞き入れてもらえません。
そこで、補償に対する説得を諦めて、お客様側が要求してくる根拠について傾聴を試みました。
頭の良い方のようで難しい法律の言葉や理知的な批判の言葉が並べられる中を、かき分けるようにして原因について傾聴を続けます。
するとわかったことは、トラブルの原因がこちら(会社)側の責任によるもので、自分は補償を受けてふさわしいと考えていたことでした。
しかし、なぜ動かなくなったのかの原因の部分、とくにその責任の部分において大きく食い違っていたのです。
こちら側としては、恩着せがましくならないように黙って無償対応したという譲歩をしていた状況だと思っていたので、そのギャップに驚きました。
しかし、お客様の言い分を丁寧に聞き出してそこに共感した上で「実のところ今回に関してはお客様側の操作によるトラブルのため補償の対象外となります。」と説明したところ、「申し訳ない」という言葉とともに、すんなりと引き下がってくれたのでした。
この瞬間、もともとお客様の中で筋が通っていたはずの話が、傾聴により正しい原因に置き換わったことで、正しく筋が通る話に置き換わったのだと実感することができました。
お客様の要求には、それと対になる原因がある上で筋が通っている。
ならば、そのお客様を説得するには、ただ要求に対して可否を答えるだけでなく、お客様の考える筋が通っているとする話を傾聴して共感した上で、本来の原因を説明し、正しい筋道に軌道修正する必要があるのだということがわかりました。
(身バレを防ぐために色々とぼかして書いているのでわかりづらくて申し訳ないです。本来、そんな操作ミスでトラブルが起こるような製品ではありません。)
それならば最初から原因が違っていることを説明すればよいと思うかも知れません。
しかし、こうした責任問題については、お客様側が疑心暗鬼になっていることも少なくなく、まずは傾聴した上で信用を獲得してからでないと、こちらの言い分を理解してもらえないことのほうが多くありました。
つまり、「相手が原因に対してこう考えている」という部分までの傾聴なくしては、こちらの言い分は押し付けにしかならないのです。
これこそが、私自信が傾聴を行う一番の目的だといっても過言ではありません。
相手に理解してもらうには、まずは相手を理解することが不可欠なのだと言えます。
・思いがけない副産物
もちろん全てにおいてこれだけの時間コストをかけるわけにはいきません。
ある程度はマニュアル通りに対応をして最短ルートをたどりつつ、拗れそうな案件についは、無理やり近道をせず確実に手順を踏むという感じで使い分けていました。
これには思いがけない副産物もありました。
相手の言い分を理解して、こちらの言い分も理解してもらった上で、相手の要求が不当であると思えれば、それは間違いなくクレーマーだと分類ができます。
その時点でお客様からクレーマーへと分類が変わるので、当然その後の対応も解決から処理へと変わります。
残念ながらそうした当り屋的な人は一定数存在して、それ専用の対応なくしては身を守れないのも事実です。
ただ、誤解をもとにクレーマー分類してしまう件数は、傾聴によって激減しました。
その証拠として、私が受け持ったトラブル対応について、解決不能(要するに喧嘩別れ)については実に1/3以下まで減少しました。
・最後に
後半部分も気がつくと大ボリュームになってしまいましたが、まずはいわゆる普段の生活の中で、この人は聞き上手だなと私が感じる人の話を実経験をもとにまとめてみました。
もちろんもっとすごい聞き上手の人も沢山いるし、そのためのスキルも沢山あることでしょう。
「大切に思う人がいるのに気持ちを汲み取ることができない。」
ありがとう。参考にさせて頂きます。 でも、が口癖になっちゃってるので治したいな。