2020-12-12

和歌山県知事メッセージがやたら賞賛されてるけどあれは小規模限定

知事からのメッセージ 令和2年12月10日 | 和歌山県

 このようにコロナ問題を考える大事なパーツは、国民一般の行動をどうするか、どのくらい制限するかということと、医療現場崩壊をどうして防ぐかということに加えて、コロナ患者発見された時、この人をいかに上手く隔離し、入院アレンジをし、この人の行動履歴から感染している可能性のある人をあぶり出して検査をし、陽性者はまた入院アレンジなどをするということであります

 このような保健医行政機能強化こそ、この危機に際して最も問われるべき事だと、現場の苦労を見て、心を痛めている私は思います

知事の話は要するにクラスター対策効率を最大限に高めるというものなんだけど、クラスター追跡能力保健所リソースという上限がある。保健医行政効率を最大限に高めたとしても、その能力には限界がある。

たとえば30人の陽性確認から45人に感染するのを、他の地域保健所二次感染33人に止めるところ、最大限効率化すれば二次感染者27人まで減らせるかもしれない。

この場合、R0=1.5の下で、他地域Rt=1.1にできるにとどまるのに対し、最大効率地域ではRt=0.9を達成できたことになる。Rt>1なら感染拡大、Rt<1なら収束最後は0になるので、最大効率地域は他の地域と違って収束させることができた、と言えるだろう。

から保健所能力の最大化という作戦は正しい。上記の例で言えば、二次感染者を12人減らす程度の地域では陽性者24名までしか対処できないが、18人減らすことができる地域なら陽性者36名まで対処できる。(たとえば東京はどうやら200名くらいまでならRt=1前後にする能力があったようだ。)

しかし、この保健所能力は、「Rtを0.6下げる能力」ではなく「二次感染者を18人減らす能力」に過ぎない。陽性確認者が300人になった場合二次感染者を270人にすることはできず、450-18=432人の二次感染者が発生し、Rt=1.44となるから感染拡大は止まらない。

閉じた系であればRt<1であればRtは減少の一途を辿るのだけども、他県から感染者が流入する開いた系の場合はそう上手くいかない。県内の陽性確認者が30人だったとしても、県外から270人の感染者が流入すれば、Rt>1となってしまい、一度Rt>1となったら、もはや系を閉じてもRtはR0への漸近線を描き続ける。

このように保健所が減らすことのできる二次感染者のキャパティを超えたときは、そもそも再生産数を下げなければならない。それには、人々の行動変容しかない。

保健行政効率化で対処できる範囲は、保健所の規模による限界がある。各自治体がこれまでそのような最大限の努力を尽くしたか否かはさておき、既に限界を超えた自治体については、人々の行動変容に依らざるを得ない。

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