2020-12-11

うつ病九段」がドラマ化されるけど不安しかない

うつ病九段」が白眉なのは職業作家でもある先崎九段が赤裸々にうつ病体験談を書いていることと、著者の実兄が精神科専門医なので、おそらくは医学的に最良の治療を受けた体験談であることだ。

一方で問題なのが、先崎九段は「うつ病九段」を上梓した時点で現役復帰しており、読者はうつ病回復記として安心して読める点(実際にどれほど回復しているかは知らないが、棋戦では少しは勝てている)。そして、作中で先崎九段将棋を指しまくっている点である入院明けから先崎九段ははっきりと現役復帰を目標に定め、苦しみながら将棋トレーニングを開始する。

まり将棋指すとうつ病治るんだな、うつ病治療には頭を使うといいんだな、復職夢じゃないんだな、と読者は思ってしまう、懸念がある。

先崎九段の実兄である先崎章医師上記をはっきり否定している。曰く、

うつ病九段精神科医の兄が語る「あの時、先崎学を救うには入院させるしかなかった」(https://bunshun.jp/articles/-/26353)の3ページ目(https://bunshun.jp/articles/-/26353?page=3

誰がなんと言おうと、先崎九段回復専門用語として何というのかは知らない)が幸運の上に成り立っているのは間違いない。世の中には満足な治療を受けられず、あるいは治療がうまく行かない、そんなうつ病患者もっと大勢いるわけである。「うつ病九段」はうつ病のものうつ病患者内面への理解を深めることができる良書だが、現実うつ病患者やこれからうつ病になる人たちの救いになるためには、ドラマ化に際しては本のストーリーラインそのままではなく、よっぽどの丁寧な脚本必要である

そのへんどうなんかなぁ、と思うとおれは不安で眠れない。

  • 才能あるお金持ちが病気になって最高水準の医療を受けた話でしかないよな

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