2020-11-18

純文学に関する雑感

純文学に関する雑感。

# 純文学とは

純文学芸術一種なので新規性必要。逆に新規性がある小説作品純文学という。

純文学における新規性とは、主に作品で取り扱う題材の新しさと表現の新しさ、そして作品通底する美意識の新しさ。それらの新しさを開拓することにより文学表現できる領域を拡大する作品純文学と呼ぶ。

とはいえ個々の作品についてそれが純文学かどうかをきちんと判断するのには時間がかかるので、純文誌(文學界新潮群像すばる)によく掲載される作家小説純文学と呼ばれる傾向がある。

# 純文学というジャンルについての現在課題

市場規模が小さいことが最大の課題。平たく言えば食っていけないので担い手がおらず、ジャンルの魅力自体が縮小している。

村上春樹以外の存命の純文学作家は? と尋ねられても普通の人はなかなか答えられない。

過去の一時期においては小説新聞文芸ジャンル以外の雑誌、たとえば旅行雑誌美術雑誌での連載が純文作家生計を支えていたが雑誌自体の数が減っているうえ個々の雑誌での枠も縮小されている。

人が減ると素晴らしい作品が世に生まれる頻度も基本的に落ちるので純文学というジャンル全体の衰退につながる。

# 存命の個々の作家について

## 大江健三郎

年齢を重ねても作風を変化させて挑戦を続けてきた点が純文学作家として模範的大江健三郎賞を長嶋有中村文則星野智幸などに与え若手の紹介に努めてきた点でも良心的。

## 村上春樹

現在日本作家では知名度が抜群だが作風テーマ進化が乏しく世間での人気ほどは評価できない。村上春樹といえばノルウェイの森世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドだが、どちらも80年代作品海辺のカフカでも2002年。このこと自体村上春樹文学的な意味での保守性を象徴している。かつてはアンダーグラウンドのような社会派ノンフィクションも手掛けていたのだが…?

自分ピンボールが好きだが村上春樹本人は気に入っていないというのをエッセイで読んだような読まないような。

## 平野啓一郎

かつてはポスト村上春樹と呼ばれることもあったひとの一人。一時期「分人主義」を提唱しこれをテーマに据えた作品を発表していた。分人主義に基づいて個人感情分析することにより従来と違った形での説明を与えるということが趣旨のようだが、過去フレームワークでも類似表現可能に思え、冗長になっただけだと感じた。

## 綿矢りさ

初期の作品個人にとっての偶像テーマにしており谷崎潤一郎三島由紀夫のような伝統日本文学に連なる。その後は徐々に青春小説へと接近している。私をくいとめては2020年の冬に映画化されるらしい。純文学市場の拡大に貢献できる良い作家三浦哲郎に「不可解な文章」と言わしめた自分に酔ったような癖の強い文章もっと出してほしい。まだ若く作家として活動できる期間が長いので今後に大いに期待。

## 町田康

文体が珍しいので一見イロモノ。イロモノなのに読みやすいところにテクニックがある。短編文体個性で押し切っている感じがするが、長編告白のような骨太作品もある。織田作之助比較されることもあるが、織田作之助は金勘定だとかの細部を積み上げることでリアリティ演出されている一方で、町田康は細部を積み上げることにより虚構感が増している感じがある。町田康生活感を排除しているからだと思う。高級なレストランと同じで生活感がなく、現実と切り離された一個の世界に没入しやすい。

## 舞城王太郎

町田康と同じ印象。自分の中では町田康パート2。文体ファンを得ているタイプ。ポップな作品も多いのでミステリ等のエンタメから純文学に入るための入口として価値が高い。

## 星野智幸

俺俺はすごい作品だと驚いたが、最後吐息目覚めよ人魚は歌う、夜は終わらないあたりは表現意図がピンとこなかった。試行錯誤しているということか。今後に期待。

## 長嶋有

明確な長所があるというよりも全体的な味で売る作家。晴れた昼間にビールを飲みながら読むと面白い

## 阿部和重

阿部和重作品純文学だろうか? 自分には文学性が分からなかった。ピストルズおもしろい。映画化すると映えるかスーパー駄作になるかのどちらかだと思う。爆死しても愛おしいか映画化してほしい。

## モブ・ノリオ

デビュー作で芥川賞を受賞してからほとんど作品を発表しておらず、断筆したものと思われる。介護入門ではヒップホップ的なノリがダサいとか邪魔という評価を多く受けていたようだが、あれは介護現実真正から受け止めるのはきつすぎるいう叫びであったり照れ隠しであったりしたと思う。私は好きだった。長嶋有と同様に、スポーツ誌Number出身の人が編集長をしていた時代文學界からデビューした。この人のように評価に困る作品をたくさん読みたい。

## 高橋文樹

新人賞にあたるものを2回受賞した珍しい人。デビュー作の途中下車は異様なほどの意気込みを感じる文章で、高校球児を見るのと同じ種類の愉しみがある。破滅派という同人主催している。最近SFを発表している。純文学での活動の有無は不明

## 桐野夏生

エンタメでのキャリアが長いが純文系の賞もとっている。東京島おもしろい。純文以外の作品が多く十分に読み切れていない。

## 辻仁成

恋愛小説に近い作品を多く書く。江國香織と一緒に冷静と情熱のあいだを書くなどしていた。大学生の頃は好きだった。今の私は対象読者ではない。最近新型コロナウイルス関連のフランス事情ワイドショーで喋っている。

## 円城塔

よく分からない。理系的と評されることもあるらしい。私も理系だがよく分からない。サイエンスエンジニアリング本質再現性だが、それが円城塔作品とどう関係するのかが分からない。楽しむための手がかりを見つけられていない。

# 純文学芥川龍之介造語であって海外には純文学はない。純文学という日本固有のくくりで語る意味はないのでは?

純文学グローバル通用しない概念なのは知っているが、ジャンルというのはそういうものなので、意味がないとは思わない。日本に現に純文学という分類が根付いている以上、それを無視するのもおかしい。一読者としても、作品を読む前に、それがエンタメなのか純文学なのかを知っておきたい。そうすれば期待外れでがっかりすることが減らせるから

# 詩はなぜ純文学ではないのか

自由詩、短歌俳句、いずれも手垢のついたオートマティックな表現が最も嫌われる。新規性があることが高評価の前提となる表現形式なのだ。だから純文学カテゴライズして新規性必要性を主張するまでもない。

ただし純文学も詩も文学性という点では近い価値観を持っている。そのことはたとえば穂村弘文藝新人賞選考委員を務めていることからも分かる。

  • 上がってないけど、小川洋子と川上弘美が好き。文体が好き。 あと津村記久子もすき。 桐野夏生は純文学じゃなくて、完全にエンタメの人だと思ってたわ。グロテスクはしんどすぎて読...

    • 日曜朝10時からFMで聞ける小川洋子の番組楽しい。いろんな文学作品を解説してくれる

  • 田中慎弥とか好きなんだけど

  • 普通の純文学解説よりも俗目線でわかりやすいので、もう少し新規性や美意識についても言語化してほしい。 練り込まれた文体とフォーカスをあてる対象の独自性くらいのぼんやりとし...

  • 山田詠美が大大大大大好きでっす!!

  • 舞城王太郎は西尾維新と併記しても問題ないくらいラノベよりの人なんだけど

    • そらあ三島由紀夫賞を受賞することとラノベであることは両立するからなあ

  • 作品名をカッコでくくるくらいしてくださいよー増田センセーよぉ(失笑)

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