2020-11-04

鮎川というオタクに優しいギャル

鮎川中学校3年の時の同じクラス女子だった。身長が高くて小顔。すっと通った鼻筋が印象的な美人だった。

校則禁止されているのに、少し明るい色に髪を染めていて生活指導によく目をつけられていた。

当時はアムラー全盛期。クラス女子はみんなルーズソックスくらいは履いていて、ギャルっぽい格好が普通だった。

その中でも彼女は少しヤンキーっぽくもあり、大人びた雰囲気もあり、いつも気怠そうな感じで「圧」があった。

俺はといえば、いわゆるアニメ漫画ゲームオタク

休み時間に仲良くする友達も少なかったので、漫画の模写ばかりをして昼休みを過ごしていた。

無論、下手くそな絵を見られるのが嫌だったので、音楽室の隣の空き教室にいつも忍び込んでいた。

夏休みもあけた9月体育祭の係を決める学級会があった。

うちの中学校では3年生が町内10キロを走るマラソンが1番の目玉だったが、

運動が苦手な俺は心の底から参加したくなかった。

そんな時「大看板を描いて、当日応援すればマラソン免除」という体育祭実行委員役職は、

まりに魅力的で、すぐに飛びついた。立候補したのは、俺と鮎川鮎川と仲の良いギャルの3人だった。

そんなオタク1人とギャル2人で看板製作は始まった。

例年、体育祭看板は、ナウシカ紅の豚などのジブリ作品が描かれることが多く、

ついでドラゴンボールエヴァなどの少年漫画モチーフとされた。

自分特に描きたいものもなかった(というか、模写してる絵は萌え絵ばかりだった)ので、

二人の話の成り行きを見守っていたところ、鮎川が「今日から俺は!!」を描きたい。と言ってきた。

当時サンデーを読んでいなかったこともあるのだが、ギャルオタク自分が知らない作品を挙げたことにびっくりした。

話を聞いてみると、高校生のお兄ちゃんがいるらしく、兄の影響で読み始めたがめちゃめちゃ面白いので、

その絵を描きたいという。俺は漫画の内容を全く確認せずにOKした。

翌日、鮎川が「今日から俺は!!」の漫画を10冊ほど持ってきた。とりあえず、読んで欲しいと。

ごりっごりのヤンキー漫画であった。特攻の拓湘南純愛組!のようなヴァイオレンスコメディー。

中学校体育祭看板ヤンキー描いて大丈夫か?という不安がよぎった。

しかし、鮎川意見できるわけもなく、主人公三橋伊藤の絵を描くことになった。

参考に借りた漫画本はタバコ香りがした。

製作が始まると、友達ギャルはなんだかんだ理由を言って、すぐに来なくなった。

しょうがないので二人で作ることになった。鮎川複数コマから

「このコマ三橋と、この表紙絵の伊藤を組み合わせた、殴りかかるような絵」にしたいと、

細かく指定してきた。彼女のこだわりはよくわからなかったが、俺はオーダーに応えた。

増田、超絵うまいじゃん!漫画家なれるよ!!」と謎に褒めてくれた。

放課後。まだ残暑の暑さの残る中、二人で黙々と作業を進めた。

1週間も一緒に作業していると、ポツポツと話をするようになった。

4つ離れた兄と2つ歳上の兄がいること、浜ちゃん友達ギャル)は最近塾忙しいから、

手伝うの難しいのわかってて無理に誘ったこと。

自分商業高校行こうと思ってるから勉強しなくても余裕だということ。

目の前にいるのは気怠そうな怖いギャルではなくて、ただの普通の可愛らしい女子だなと思った。

女の子からそんな身内話を聞くのは初めてで、俺は多分恋に落ちていた。

提出日の前日、19時過ぎ。仕上げ剤が乾燥するのにもう1〜2時間ほどかかった。

家の遠い鮎川あんまり遅くなるのは良くないかと思い、先に帰した。

先生にもう少し居残る旨を職員室に伝えに行き、戻ってきたら1枚のメモ書きが残っていた。

あんまり無理しないでね。看板作るの楽しかったよ。」

体育祭は無事に終わり、懸念していたヤンキー絵ということで教師から怒られることも無かった。

クラス受験一色に雰囲気が変わり、鮎川とはまた話す機会もなくなった。

お互いどこに進学したのかを知ることなく、俺たちは卒業した。

それから数年後。成人式の時、久しぶりに中学校時代同級生と再会した。

特に仲の良い友達もいなかったが、飲みに行くというのでついていった。

鮎川は来ていなかったが、思い出話の中で彼女名前が出てきた。

彼女のお兄ちゃんは有名なチーマーのヘッドでめちゃくちゃ怖かったこと。

そして、お兄ちゃん友達と当時付き合っていたらしいということ。

ご両親が離婚されていて、結構複雑な家庭だったとのこと。

数年前、池袋を派手な格好で男性歩いてるのが最後の目撃談だったこと。

俺が見えてた世界と、彼女が見えてた世界は同じ場面でもきっと全然違ってたんだろう。

でも黙々と絵を描いている彼女の横顔は綺麗で、今でも覚えている。

  • 中三の時にアムラー全盛期ってことから行って増田はアラフォーと見受けるがなんでいまさら最後のアップデートが20年近く前の成人式になる鮎川との思い出を書きたくなったの?鮎川死...

    • https://honeshabri.hatenablog.com/entry/black-swan これ読んで、ちょっと思い出したんだよね。オタクな自分に優しくしてくれたギャルいたなーって。幸せになってると良いなぁ。

  • あれ?これ「ギャルの鮎川さん」とかいう感じのタイトルでどっかの月間少年誌とかで連載してなかったっけ?

  • いつのはなしをしてんねんな (moody蜜柑道かよ)

  • 「きまぐれオレンジ☆ロード」いいマンガだよね。

  • 淡々と書けばいいのに自己陶酔してる感が漏れ出てるのがたまらなくキモい

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