2020-10-16

久しぶりに列車に乗った

在宅勤務なんだがオフィスでやらなきゃいけない手続きがあるので久しぶりに電車に乗った

新型コロナウイルスもあるのに出社しなければいけないなんて気が重い

気を紛らわすために本でも買ってのんびり座って会社の最寄駅に着くのを待つ

本を読み終わってしまいなかなか着かないなと違和感に気付き、まだ着かないのかと思って顔を見上げたら乗っている列車終着駅が「奈都」だった

「奈都」という駅なんて聞いたことがない

どうも乗ってはいけない列車に乗ってしまったようだ

やれやれこれは遅刻かもなぁと思ったところで「奈都」に着いてしまった

周囲の光景日本では見たことがないものになっていた

切り立った岩の柱のような山がちらほら見える

どこかで見たことがある

中国秘境光景だこれは

確か武陵源というところだった

そこで私はようやく気付いた

「この世ならざるところ」に迷い込んでしまたことに気付いた

これはいかんと列車から降り、折り返しの列車を乗って引き返すことにした

その様子を見た車掌が私に話しかけてくる

『お客さん、ここの折り返しは6本に1本しかお客さんの乗ってきたところに戻らないんですよ、ここで待ってて大丈夫ですか』

なんとそうなのかと眩暈がしてきてクラクラしてきたが、平静を装って答える

大丈夫ですよ待つのには慣れてます

そこで車掌会釈をして去っていった

木造の古い校舎のような待合室でぽつんと待っていると見知った顔の他の客たちが入ってくる

名前は知らないがどれも同じ会社の人たちだ

なぜ彼らはいるんだろうと疑問を持ったが声がうまく出せない体が鉛のように重い話しかけることもできない

そうこう思っているうちに彼らは目当ての列車が来たのか続々と待合室から出ていった

私だけがつんと残されている

ようやく私が乗るべき列車が来た

やっと帰れる、そう思った瞬間に私の瞼は重くなり、とぷんと深い水面の底にゆっくりゆっくりと沈んでいった

気がつくと私は眠りから覚めていた

どうやらこの世に帰って来たようだ

おはよう

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