別に、絵柄がエロい訳でもないし、ツイフェミの標的になりそうな非常識なおっぱいも持っていないし、とらぶるみたいなギリギリのシーンがあるわけでもない。
(なんならシャワーシーンとかもあるのだが、そこは全くエロくない)
また、仕草がエロいということもない。夜凪の一挙手一投足にフェチズム的なものを感じるわけでもない。
ただなんだかエロいのだ。
それをずっと不思議に思ってて、まああんな事件があったんで、ちょっと真剣に考えてみたのだ。そのエロさを。
夜凪景。女子高生。女優志望(後に女優)。演技にかけて本当にその人物そのものではないかと錯覚させるほどの類稀なる才能を持つ。
意思の強い透き通った目をしている。一本の筋が背中に真っ直ぐ通ったような、堂々とした佇まいをしている。理不尽をはねのける強さと決して曲がらないメンタルを持っている。
ところが読者には、それと正反対の印象も感じさせる。
すなわち、「ちょっと押したら壊れそうだ」という感覚である。薄いガラスでできた工芸品のような。
こんなに強い目をしているのに。こんなに理不尽を切り開いて突き進んでいるのに。どうしても何かのタイミングで、余りにもたやすく道を踏み外しそうな危うさを感じる。
ものすごく些細なきっかけで、人格が変わるほど壊れそうに思う。道端で夜凪とすれ違うどんな人間であっても、夜凪を壊してしまえる。そんな気すらする。
きっとそれは夜凪の女優としての描かれ方、人格が不安定になるほど役にのめり込んでしまえるところとか、自他の区別がつかなくなっていくところとかに起因するのだろうが。
そんなことを考えながら、ふとなんとなく、本当に何の理屈も筋も通っていないのだが、あの事件を起こした犯罪者とこの作品の原作者は確かに同一なのだと、妙に腑に落ちてしまった。