2020-08-27

甥と酒を酌み交わす日に、俺はきっと坊主になる。

おっさんだけど、今、髪を伸ばしている。

何かの願掛けとか、散髪代の節約とかではない。

好物のラーメン蕎麦を食べるときは麺と一緒に吸い込んでしまうし、シャンプーリンスの他にコンディショナーやヘアパックまでして、さらドライヤーで乾かす手間が面倒でたまらないが、それでも髪を伸ばし続けている。

その結果、後頭部には結構サイズポニーテールがぶら下がっている。

俺の体格はいい方で、プロレスラーに間違えられることも過去に数度あったが、最近マスクポニーテール起因のオールバック状態でその頻度は格段に上がった。

俺ならこんな見るからに怪しい風体の男に声を掛けるどころか、前から歩いてきても相手を逆上させないように気を使い進路を変える。

その点、声を掛けてきてくれる方々の肝の太さが羨ましくもある。あとは俺がプロレスラーでさえあれば、みんなが幸せになる。

俺にはもうすぐ二十歳の誕生日を迎える甥がいる。

彼は生後半年大人の握りこぶし大の腫瘍を除去する手術から生還したサバイバーだ。

手術後、小さな体には何本もの管が突き刺さり、その時の傷跡は今なお残っているし、当時は薬の影響か体毛が抜け落ちた状態だった。

その姿をNICUで見た俺の両親は涙が止まらなかったそうだ。

再来月、その甥とついに飲みにいけることとなる。

今は亡き父の念願を、おじさんたちで果たそうと企画している最中だ。

俺が髪を伸ばしている理由は「ヘアドネーション」のため。

多少の不便を堪えれば、小児がんで髪の毛が抜け落ちた子供のためのウィッグ材料となる毛髪を寄付できる。

ハゲしまう前に、白髪がこれ以上増える前に、今日もトリートメントを欠かさずにする。

から、甥と酒を酌み交わす日に、俺はきっと坊主になる。

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