2020-08-11

器用貧乏地獄天国

親戚の子供の中で、なんの取り柄もなく、パットしない子供だった。

アナウンサーになれるくらい美人だったり、推薦もらえるほど運動が出来たり、一度見ただけで教科書を覚えたり、場を盛り上げることが上手い口達者だったり。

何かと個性の強い、優秀な兄弟、従兄弟達に囲まれた幼い私は劣等感に常に押しつぶされていた。

そんなわけでしばらくの間、もともと口下手で内向的性格も相まって、自分は何も出来ない人間なんだと悩んでいたのだが、やっとここ最近自分の取り柄がわかって来た。

私は器用貧乏だったのだ。

なにか秀でたところはないのだが、平均的に何でもそれなりに出来ていた。

器用貧乏は、なまじ器用であるために何事も中途半端だとか、他人から便利がられてこき使われるとか。

そういった負のイメージが強く、まあ実際、そういった側面も大きくあるのだが、不惑にもそろそろ手が届くというこの年齢になって、意外と平均的に何でも出来るという人間は、仕事においては強い。

特にサポート役としては非常に使い勝手が良いらしく、上には性格的になれそうにはないが補助役としては引っ張りだこになった。

子供の頃、この子パットしないから将来が心配などと言われていたが、比較的安定した生活を送れている方だ。

劣等感の沼に溺れ、地獄のような子供時代からすれば、今の状況は承認欲求が満たされ、おそらく天国で、幸せなのだろう。

しかしながら人間というのは困ったもので、こんなにも幸せなはずなのに、

私はそれでもなにか一つ、人より秀でたモノが欲しいと相変わらず思う欲求が尽きない。

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