俺は学生の時陰キャだった。陰キャの定義なんて知らないけど、コミュ力も気力もあまりなかったから陰キャだったと思う。
俺は大した理由はなかったけど家から離れた高校に入学した。通学に1時間半ぐらいかかった。
入学して教室に行っても見知った顔なんて1つもない。人見知りして誰かに話しかけることもできない。でも、そのうち友達の1人や2人できるだろうと思ってた。なんとなく。
中学では小学校のつながり、小学校では幼稚園のつながりで友達を作った。幼稚園の時にどうやって人と仲良くなったかなんて覚えてなかったし、覚えてたって高校では何の役にも立たなかっただろう。
高校に入って1週間がたち1か月がたち半年がたっても友達はできなかった。校外学習の班分けなんて「押し付けあわれてるな」って自覚した。一応班には入れたけど、入れただけ。徐々にほかの班員と距離が離れていって最終的には1人になったけど、その方が気楽だった。教師に1人で歩いてるのが見つかって「おい!単独行動するな!」と言われた。でも単独行動してるのが俺だって気づくと「あ、まあお前は1人でも大丈夫か...集合時間守れよ。」と言われた。すごく安心したのを覚えてる。班に戻されて「班ごとに行動しろ」なんて言われたら班の中に気まずい空気が流れるに決まってるから。
同じクラス、学年、学校を見回してもボッチなんて俺以外にいなかった。不登校気味で最終的に退学していった人にも友達はいた。
でもボッチ予備軍みたいな人はそれなりの数がいた。学校に1人しか友達のいないっぽい人とか。
そういう人たちを見るとだいたい「オタク」だった。通学カバンにアニメの缶バッチを付けてたり、漫画研究会で自作漫画を描いてたり。すごくすごく羨ましかった。
実は俺もボッチからボッチ予備軍に昇格できそうなことがあった。
客観的に俺を見たら「アニメ、漫画大好き!オタクです!」みたいな見た目である。
たぶんそれが理由で「オタク」な人が「好きなアニメある?」と聞いてくれた。でも残念なことに俺は全くアニメにも漫画にも興味がない。アニメなんて幼稚園の時にアンパンマンを見てたぐらいだ。
なので「ないかなあ」と答えた。それでも何とか話を続けなくてはと思って、逆に好きなアニメを聞いた。聞いたこともないアニメを答えられた。話を終わらせたくなかったのでストーリーを聞いてみた。興味も知識もない話をされてもうまく返答できない。ひとしきりストーリーを説明してもらった後、沈黙がやってきた。そして「じゃあ、またねー」と言われて会話は終わった。
1年生の終わりに、もうここまで来たら友達はいいかなと思っていた。そんな気持ちではもちろん友達はできなかった。結局2年間友達はゼロだった。友達どころか、少し話せるという人もいなかった。でもいじめられはしなかった。誰も俺に興味がなかったのかもしれない。