時々論文査読を引き受ける。私がポンコツな研究者なせいか、基本的にひどい論文しか来ない。今も1本の論文の査読レポートを書いている最中だけれど、このままだと罵詈雑言を書きそう。ちょっと心を落ち着かせて教育的な優しいコメントを書きたいので、少し毒を吐き出させて。
introductionから支離滅裂でこの研究をやる意義も何をやりたいのかもわからんなんていうのはよくあるけれど、この場合は論文の書き方の問題だからまだ救いがある。こういうのもすごいストレスたまるけど。もっとひどい論文もあって、そもそもデータからしておかしい。
著者が〇〇の効果だと主張するそのデータは観測機材を誤った使い方をすると出る典型的なノイズで、機材の仕組みが理解できればそれがノイズにすぎないって分かるようなのとか。
「××率」を測定しましたと書かれているけれど、示されているデータは「率」でないただの「××」の値。その値だけではいろいろな条件に影響されて何も論じられないから「率」にするのが一般的なのに、Materials and Methodsを読む限り「率」を出すための基準の値はとっていないっぽい(本当は基準の値を測る方が大変)、とか。
これ以上は詳しく言わないけれど、そもそも観測・実験自体まともにできていないのがたくさん。しかも、何にも使いようがないようなデータ、というよりむしろデータですらない数字なのに、それを取るのに1年とか2年とかかけてフィールドワークをしていたりする。どうやら、大抵の場合は第一著者が大学院生か若いポスドクみたい。こうして研究費と、そして何より若者の貴重な時間が無駄に費やされていると思うとすごく辛い。
なんで指導教員とか周りの研究者はきちんと教えないかな。急に盛り上がってきた分野だから、ちゃんと指導できる研究者は限られているかもしれない。ジャーナルのEditorすら「こういう理由で、残念ながらこれ全部屑データですよ」と伝えてもあまり理解されていないっぽいこともあるし(EditorはMajor revisionの決定にしていたけど、そもそもこのデータセットでは有効なreviceができるわけがないし、欠けているデータは絶対に後から取れないんだが)。観測手法とか実験の方法とかは少しgoogle scholarで調べれば出てくる。最近は関連した専門書も少しずつ出てきた。教員が観測・実験方法に詳しくないなら、せめて正しい研究の仕方を勉強する方法くらい教えてやってほしい。本当はその大学に乗り込んで代わりに学生の指導をしてやりたいのだけど、匿名の査読者ではそういうわけにもいかない。
こういうのはヨーロッパとアジアが多い。日本からのはたまに。そういえばアメリカとオーストラリアからは来たことがない・・・けど、私の手元に来ないだけだな。割といいジャーナルにpublishされちゃった論文で結構ひどいのを見たことがある。Refereeもeditorも誰か気付けよ。てか、分からないならreferee引き受けんなよ。