2020-07-20

界隈の主流に馴染めなくなった神を見送った話

 だいぶ前の話だが、私はとある少年漫画ジャンル同人村にいた。その漫画は不人気ではないが大人気というほどでもなく、アンケート順位は真ん中らへんをキープし続ける、良くも悪くも中堅といった存在だった。

 私はわりと序盤から登場するメインキャラのCP推しており、定期的にpixivツイッター考察や短文を上げていた。ちまちまと活動していると、ある日大尊敬する字書きの神にフォロバを貰えて、コミュ障の私は空リプで喜びを表した。

 神と私は直接的に会話することはなかった。神も私もあまり積極的に他社と交流する感じではなく、感想は主に空リプで記していた。私の文字にもたまに空リプを貰えたし、たまにプロフに飛んでくれるのか、神への空リプいいねをもらえていたので、おそらくは認知されていたのだろう。

 相互になった直後のフォロワー数は、私が200人ちょっと、神は3000人ほど。作品知名度を考えると、神の3000は奇跡のような数字である。神はやっぱり人気だなあ、と思った。

 相互になってしばらくして、作品アニメ化が決まった。メインキャラの声優さんが神のかつてはまっていたジャンル推しと同じようで、珍しく神のツイートにはしゃいだ感じがあった。「○○さん、私は××で知ったなあ」とつぶやくと、いいねが来た。

 TLの話題アニメ一色になり、アニメではどこまでを描くのか、省かれるとしたらどこだろう、作画崩壊大丈夫かな、等々連日盛り上がった。神はアニメ自体にはあまり触れていなかったが、執筆頻度がだいぶ上がっていた。

 そしてついにアニメが放映される日がやってきた。アニメ化で一気にハネた作品もあれば、大失敗に終わり、原作にもしわ寄せが来たようなパターンもある。大好きな作品にはできるだけ成功してほしいし、広く知れ渡ってほしい。大失敗だけは避けてくれ、と思いながらテレビの前でスマホを握っていた。

 第1話を見終えた私は、感動を抑えきれず、ツイートを連投した。一番心配していたシナリオの面はオールクリアで、作画も終始安定していた。声優さんもみんなキャラに合っていて、OPED作品にピッタリの曲調と歌詞。次回予告のナレーションも含め、これは絶対面白くなるぞ、と思わせられる内容だった。

 TLを見るとみんなとっても喜んでいて、制作会社さんに足を向けて寝られない、○○さんありがとう円盤100枚買う、といった感じだった。神も円盤を予約していた。

 そして、結果から言うとアニメ化大成功した。単行本販売数は何倍にも跳ね上がり、カラーページをたくさんもらった。いろいろなグッズが出て、二次創作にも人が増えた。

 他ジャンルからも人がたくさん流入してきて、爆発的に作品数が増えた。たぶんこのあたりから、神は違和感を覚えはじめたのだと思う。


 ここから先は、たぶんたくさんの人が嫌な気持ちになると思う。主流になじめなかったいち腐女子の、恨みと怒りと癇癪のフィルターを通したレッテル張りなので、嫌な予感がしたら読むのをやめてほしい。

 私は、二次創作を大きく分けると2種類あると考えている。原作にできる限り忠実であろうとする「厳格創作」と、原作に忠実であるかをあまり気にしない「ライト創作」だ。もちろん、二次創作に正しさとか再現度合いを持ち込むのが良くないことはわかってるのだけど、そこはお気持ち文ということで許してほしい。

 神は書くのも読むのも、厳格創作を好んだ。厳格といっても、ちゃんとした文体じゃないとだめ、というわけではない(私の文章でも読んでくれてたから)。その作品からこそ生まれ創作を見たい、という感じだ。

 すごく厄介に聞こえるかもしれないが、たとえば原作レディーファースト設定のキャラが、当て馬モブ女にあまりに冷たかったり、陰口を叩いてたら、それはキャラ崩壊と言えるだろう。繊細な原作ファンが見たときに、小骨が刺さるような描写が少ないのを厳格創作、と思って欲しい。

(もちろん、原作ではできないことができるのも二次創作の魅力の一つだ。上の例で言うと、恋人への愛情をきわだたせるために、モブにとげとげしい態度を取らせるのは効果的だろう。ただ、私がそれを見ると、まるで別人のように思えてしまうというだけの話だ。)

 同じ漫画二次創作民であっても、単行本派と本誌派とで解釈ギャップが生まれがちだが、アニメ化した作品だとそこに原作未読勢が加わる。

 アニメは尺の都合でわき道にそれる話はカットされがちだし、キャッチーキャラ付けがされがちなので、アニメ公式が率先してライトに捉えられるように、特徴を誇張しはじめる。それを見たアニメ勢は、ライト創作をする。その繰り返しが続いた結果、ジャンルの主流はライト創作になった。

 繰り返し言うが、これは個人の好みの問題だ。厳格創作こそが正しくてライト創作は悪いというつもりはない。ライト創作はそれこそライトファンに人気が出るし、拡散もされやすい。予備知識ゼロのひとの目に留まって、作品に興味を持つきっかけにもなりやすい。そもそも創作否定する権利なんて、私にない。

 でも、ライト創作がたくさん増え、ライト創作いいねが万に届くのがそう珍しくもなくなり、オンリーイベントなども開催されるようになっていくのと同時に、神の投稿頻度は減り、ツイートアニメ関連のはあまりしなくなっていった。

 全く見かけられずかなりさみしくなったが、本誌の発売された日の夜には考察感想が上がったため、少なくとも消えてはないことに安堵していた。私はライト創作も神と違って普通に楽しめたが、やはり一番心に響くのは神の作品であった。応援になるかわからないが、過去作の感想あらためて空リプで書くと、いいねをしてくれた。


 アニメ放映開始から少しして、TLや小説ランキングライト創作が埋めるようになった。トップ50位のうち半数以上を占めることも珍しくなく、まさに覇権ジャンルになった。冗談なんだろうけど、これの小説を書けば簡単デイリーランクインできると言ってる人も出てきて、字書きとして少し複雑な気持ちになった。

 私と同じ時期に活動を始めた相互さんは、いつの間にか相互でなくなっていた。他のジャンルから転入者が増えた。ランキング専有に怒る人が出てきた。いろいろあった。


 ある日、神がアカウントを消すと宣言した。びっくりして、いいねリツイートもできず、しばらく固まってしまった。話しかけるべきだったのかもしれなかったが、何も言えなかった。猶予は1週間後、1期の最終話放映日だった。

 消すのはツイッターアカウントだけのようで、pixiv倉庫として残すらしい。神が知ったら気持ち悪がるかもしれないが、神のツイートをさかのぼれるだけさかのぼって、メモ帳に保存した。

 神がアカウントを消す日。これまでお世話になりました、というツイートに、何件かリプライがついていた。こっそり混じる勇気もなく、大好きです、とだけ空リプした。過去形にはしたくないし、これから先の話をする気にもなれなかった。

 あなた解釈が好きです。あなた文章が好きです。あなた感性が好きです。あなた存在が好きです。全部言えばよかった。でも気持ち悪がられるのが嫌で、これが精いっぱいだった。

 神の最後ツイートは、「私の文章を読んでくれた方々、感想をくださった方々、好きといってくださった方々に、心から感謝を申し上げます。大好きです。」だった。

 神がいなくなってから少しして、私もこのジャンルから離れた。ライト創作自分では地雷でなかったつもりだったのに、神の厳格創作供給が途絶えてからは、見るのがだいぶしんどくなっていった。

 どこかで見たスレッドをなぞったような話。口調と趣味を誇張され、性格は全く逆になっているギャグ名前と見た目だけ借りた別人がしゃべってる姿を見ているような違和感ライト創作を見るたびに、この役割をこのキャラにする必要性は?なんてついつい考えてしまう。あれほど楽しかったはずの巡回ストレスばかり感じているのに気づいて、ジャンルにいられなくなった。

 神は移動先を言わなかった。もう創作をしないつもりなのか、それとも名前を変えてどこかで創作しているのか、私にはわからない。ただ、もし再開できたら、今度こそは直接リプを送りたいな、と思っている。

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