※これは、一次選考で落選したからといって筆は折らないでほしいというある意味身勝手な願いを込めた所感です。
少し前に、プロ作家様の方の生徒さんが小説の賞に応募して一次落ちした作品が文章はしっかりしているのに……というツイートが回ってきました。
寡聞にてその方自体を知らなかったのですが、恐らくご自身も選考委員等なさったことがある方なのでしょう。その作品が一次落ちなのはおかしいといった意見でした。
このツイートを見て、大分前に下読みのお仕事をしたときの記憶が戻ってきたので、少し語らせてください。
私がお仕事させていただいた賞は、文章力より発想力重視という選考基準の賞でした。
そして受け持った作品の中からの通過作品は、上限いくつまでという制限があったものです。
受け持った作品の中で、個人的にとても好みの作品がありました。
テーマはよくあるものでネタ的に目立った部分があるとはいえない物語でしたが、伏線の重ね方、構成、文章の機微など、とてもよく練られていて素敵な作品でした。
その賞は全員に評価シートが送られるものでしたが、下書きで規定文字数の4倍は書きました。それぐらい私にとって“エモい”作品でした。
理由はただひとつ。受け持った中で他に発想力が発揮されている作品が通過数上限いっぱいまであったからです。
賞の選考基準で判断するなら、どうしても通過作品に入れられませんでした。
でもその作品が悪いわけではありません。
その作品がもし他で賞を取り書籍化されるなら、私は買うでしょう。
それぐらい好きでした。でも通せませんでした。
だから一次選考で落ちたからといって、その作品がこの世に出せないほどの酷い作品というわけではないと思います。
賞レースに参加して、日々頑張っている方々にとって、一次選考落選はとてもショックなことだとは思います。
それでも、決して筆を折らないでほしいと願っています。
自分の作品が書籍化されることを望む理由は人それぞれでしょうし、その中には私には予想だにしない動機の方もいるかもしれません。
それでも、世界のどこかには作品を愛してくれるという人がいると信じていてほしいと思います。
※ところで、なろうやカクヨムなど様々な投稿サイトにないか、当該作品がなくても作者様がネットの海に存在していないか探してみたのですが、見つけることができませんでした。もしできるなら感想を贈れたらと思っていたのですが……。