2020-07-10

あなたって言えない

地元方言もあって、二人称といえばあんたやおまえであった。

就職のために出てきた東京で一番カルチャーショックをうけたのは、かわいい中学生くらいの子がキャッキャとじゃれあいながら、「あなた変よー」と言ったことだった。私と彼女等との距離はほんの数メートルしか空いて居なかったのに、その間には高くそびえ立ち深く埋め込まれた壁を感じた。

きれいな言葉。擦り切れてテカっていないどころか、素人の手で洗われたことのなさそうな制服美容院で整えられた髪。見たことのないくらい輝かしい生き物だった。後光さえ感じた。そういう子等は、子のうちからあなた」という相手への呼び掛けを使用できるのだ。

なんのことはない、増田ブクマする際に「あなたは」と書きそうになったが、どうにも耐えられなくて「増田は」と書き直した。増田ってのは本来は「名無しの権兵衛」のような、特定個体でありながら誰とも言えない匿名ダイアリーユーザを表す呼称だった。それなのに、なんだかトピ主みたいな呼称ものすごい気持ち悪いものにしてしまった。それでも、あなたと書くよりはマシだった。

婉曲表現というのは、皆が使うようになったら明確な拒否を表すものになる。「結構です」なんてものすごく強い拒否言葉だが、原義としては「大丈夫ですーー」くらいのものだ。もう数年もすれば、「大丈夫」すらかなり強い拒絶の表現になるのだろう。

そのように言葉ニュアンスというのは、使用者によって日々変わって行く。それだけでも恐ろしいのに、ベースとなる言語すら違うのだ。どんなにどんなに学んだつもりになっても、この地域で正しい言葉遣いなのかは分からないままだ。

えっと、「あなた」って、 You意味普通に使う言葉なのでしょうか。それとも何か他の意味を含むのでしょうか。現代三十路が使って良い言葉なのでしょうか。誰かに、正解を教えて欲しくなる。

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