2020-06-26

[] #86-1「シオリの為に頁は巡る」

世界俯瞰して見てみると、大抵の物事陳腐に感じてしまう。

これを若い頃にやり過ぎてしまうと、いわゆる中二病だとか高二病だとかになりやすい。

かくいう俺も、これに片足を突っ込んでいる状態だった。

周りの人間がどうでもいいことに時間を費やしていて、それがとても愚かしく思えたんだ。

特にネット匿名掲示板とかは世紀末典型例だろう。

何の気なしにオススメ作品を聞いてきたり、作品つの解釈で繰言を交わしたり。

意味のない議題に花を咲かせ、前提を共有しないまま漠然とした話を延々と続けたり。

問題にならない問題をあげつらい、ピュロスの勝利を追い求めて駄弁を繰り返したりしている。

皆が全く違う方向を向いたまま、形だけのコミニケーションを成立させているようだった。

その様相を冷めた目で見るなってのは、斜に構えたティーンエイジャーには無理な相談だろう。

勿論それはネットに限った話じゃあない。

しろ現実の方が、その“エグ味”は尚さら際立っているかもしれない。

====

あれは確か、衣替えの時期だった気がする。

上着絶対必要ないけれど、長袖か短袖かというと悩む、そんな中途半端気候だった。

そして俺はというと、その日の衣選びを失敗していた。

「……寒いな」

原因は、毎朝みていた情報番組だ。

そこで流れる天気予報は非常に信頼性の高いものだったが、問題はそれを伝える予報士にある。

いつもは中肉中背の男性がやっていたんだが、その日だけなぜか肥満体型の生物が予報士だった。

その時点で勘付くべきだったが、寝起きの頭では難しかった。

無責任なこと言いやがって、あの天気予報士……」

当然、この恨み言は八つ当たりだ。

デブの「短袖が丁度いい気温でしょう」を信じた俺に落ち度がある。

あの予報士と同じ体型の人間にとっては、少なくとも嘘じゃないんだから

「こりゃ、ダメだ。コーヒーでも飲もう」

俺は行きつけの喫茶店避難することにした。

次 ≫
記事への反応 -

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん