同性であれ、異性であれば、自分から話しかけるということが出来ない。
なので友人もほとんど居ないし、彼女なんて存在したこともない。
ただ、それは恥ずかしいとか何を話せばいいんだろう、という事ではない。
だが、少なくとも相手からすると、何の労力もなく、話しかけるというコストを支払うことなく友人が出来ることになる。
異性に対しても同じ考えで、向こうは何一つとして労力を得ることなく、パートナーを見つけることができる。
この世間一般的な行為が、自分には理不尽なものとして、どうしても受け入れられない。
どうしてこんなアンフェアな行為が世の中で行われているのかが理解できない。
人並みに平穏が欲しいので、家庭が欲しいとも思う。このまま年を取り続けることに焦燥に駆られもする。
だけど三十年間近く、この生き方を続けてきた以上、今更変えることなんて出来るわけがない。
ならせめて、自分から行動しなくても、相手から寄ってきてくれるように努力をしてみた。
趣味や何かしらの活動などにも手を出してみて仕事も頑張ってみた。
趣味の方は、家から皇居が近いし、職場の同僚も参加していたマラソンのコミュニティに入ってみた。
流石にプロには負けるが、素人の中ではトップクラスの成績を出せるようになったし、フルマラソンも平気で完走できるようになった。
だが、コミュニティの人間はことごとく飽きて、自分ともう1人しか居なくなってしまった。
とりあえず部下全員を食べさせていくことも出来ているし、平均年収の1.5倍ぐらいは出しているので、ここまで出来れば十分だろう
自分の年収だけで言えば一般のサラリーマンの20倍ぐらいはあるんじゃなかろうか。
財布も時計も高級品にしてみて、1人で飲んでみたりしているが、今まで異性から話しかけられたことはない。
もちろん、自分の頑張る方向が間違っていることはわかっている。
こんな自分を見かねて、数少ない友人や取引先が女性を紹介してくれることもある。
紹介してくれた顔を潰すわけにもいかないので、初回のやり取りだけは自分の考えを曲げて、こちらから食事までは誘うようにしている。
だけど、そこから先がどうしても何も出来ない。
どれだけ相手のことを気に入ったとしても、二回目の誘いなんて絶対したくないし、心がそれを否定する。
そんなことばかり考えていると、どうして自分は女性として産まれなかったのかと思う。
女性は女性で考えているほど楽ではないとか、偏見だとか……というのはあると思うが、だとしても、そう思ってしまう。
少なくとも自分の容姿を磨くなり、仕事を頑張っていれば、誰かから話しかけられて、選ぶことが出来る。
自分がこれから先、どれだけ努力しても得られることがない「向こうから来てくれる」という最強のカードを持つことができる。
はてな版なろう小説
思うだけじゃなくほんとに死ねよ