初めに断っておくと「HPVワクチンは効かない」という話ではないです。
が結論なので、分かってますよという人はここから先は読まなくて良いです。
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30代後半、会社員、未婚、パートナーなし、子なし、一人暮らし
都知事選候補者が反ワクチンだとか某紙の反ワクチン報道が原因で接種率が下がった結果
最近になって対象世代に前がん病変が続出しているというSNSの投稿を見て
思うところがあったので
婦人科通い→治験に誘われる→協力(治験終了後に実薬接種が判明)→12年後に子宮頸がん検診に引っかかる→前がん病変で手術→経過観察中
要約するとこうなので、はいそうですかという人は次の大見出しに進んでください
私は元々生理が重かった。小学生の頃から塾の椅子を血で染めていたし、生理が重いというのは単に出血が多いだけではなく
授業中に身体をくの字に曲げながらトイレに行き、吐くわ下すわでそのまま保健室行きということもあった。
高校卒業後に自分の携帯を持ち、調べるうちにピルには月経困難症を軽減する効用があると知って、
ピル処方に力を入れていると評判の婦人科に行ってみることにした。
ピルは私にとっては魔法のように素晴らしかった。生理は軽くなるし、いつ来るかわかるから慌てなくて済む。旅行もライブも生理と重なることと無縁になった。
2007年、いつものように婦人科に行った私はHPVワクチンの治験をやるが条件に合うなら協力しないかと誘われた。
一番印象に残っている条件は「経験人数4人以下」
確か4人だったと思う。3人だったかもしれない。とにかく、HPVワクチンというのは本来初めての性交渉を経験する前に
接種してHPV感染を予防するものなので、治験参加者にもある程度の制約があるということだ。
私は2003年5月に3人目の彼氏と別れて以来何もなかったので条件に合致するということになり、協力することにした。
治験は30ヶ月にわたり、終了後に「あなたに接種したのは実薬の4価ワクチンでした」と知らされた。
その後も私は彼氏のいないフリーのまま、30代になってもピルを飲み続け婦人科に通い続けていた。
婦人科検診では何の問題もなく、世話になりはじめて10年を超えた婦人科医からも「ワクチン打ったしね」と言われていた。
ところが2019年のある日、検診の結果を早く聞きに来いとクリニックから電話がかかってきた。子宮頸がんの細胞診で引っかかっていた。
クリニックから連絡を受けた時点の細胞診結果は「ASC-H」というもので、追加の検査(組織診)が必要な結果だった。
ところが組織診では要治療の所見が出ず、3ヶ月後にもう一度検査することになった。
そして3ヶ月後、今度は細胞診でASC-Hより2段階進んだ「HSIL」という結果になり、組織診では上皮内がんを含めた可能性のある
「CIN3」が出たため、私は手術のため大学病院を紹介されることとなった。
子宮頸がんに関して、昔は前がん病変にあたるものを「0期」と表現していたが今はそれがない。
「子宮頚部上皮内腫瘍」=「CIN」として、CIN3は放置すると浸潤がんに進行する可能性が高いため治療の対象となる。
手術は「子宮頸部円錐切除術」といって、文字通り子宮頚部を円錐形に切り取る手術だった。
細胞診がブラシでこすった検体、組織診は米粒くらいに切り取った検体、円錐切除はさらに大きく切り取ってそれを病理診断に回すことになる。
幸いにして病理診断では悪性所見なし。私は現時点ではがんではなかったが、経過観察は続いている。
とあるアイドルが子宮頸がんを公表したらビッチ扱いされた話を聞いたことはあるだろうか。
これは私自身の誤解でもあったのだが、
・HPVはほとんどの場合免疫によって自然に排出されるが、持続感染した場合は前がん病変を経てがん化する
この「持続感染」、決して「セックスの機会が途切れない」ことではないのだ。
ワクチン治験のくだりに書いているが、私に彼氏がいた人生の最終地点は「2003年5月」である。
前がん病変が出たということはHPV感染していたということだが、感染の機会は2003年5月より前なのだ。
もっと言うと別れる前は数ヶ月に渡りレスだったので、人生で最後にセックスをしたのはさらに前ということになる。
2003年5月より前に感染したHPVが2019年にがん検診で引っかかるまで体内で息を潜め続けていた
前述の通り、HPVワクチンは初めての性交渉の前に打っておくものだ。
経験人数が少なくリスクが低いとみなされたものの、私が2007年にワクチン治験に協力した段階では、既にHPVに感染していたということになる。
つまり、感染してから打っても意味はないよということ。その結果が手術することになった私だ。
副作用報道のおかげで日本のHPVワクチン接種率は地を這うような数字にまで落ち込んでしまった。
どうしても打ちたくない、うちの娘に打たせたくないならまあそれでもいい。
ならせめて早期発見のために婦人科検診を受けろ、娘に受けさせろ
これを声を大にして言いたい。
ワクチン接種率が下がったからって婦人科の受診率は上がったか?上がっていないのだ。
初めに書いた「ワクチン接種率が落ちたことで対象世代に前がん病変が続出している」という(ソース不明の)SNS投稿、
「前がん病変」のうちに見つかるのはきちんとがん検診を受けている人だ。
この状態なら手術にしても円錐切除で済んで子宮を取らずに済むし、私の場合円錐切除の入院は2泊3日、手術の2時間後には点滴等々すべての管が取れて
退院後は自力で歩いて帰宅できたくらいだから、前がん病変で見つけておけば大ごとにならずに済む可能性がまだあるのだ。
それがどうだろう、婦人科に行く習慣のない人が我慢に我慢を重ねて色々な症状が出て初めて検査をしたら子宮全摘しか道がないとかいうことが本当にある。
セックスでうつるウイルスを防ぐワクチンなんて汚らわしいキーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!
うちの娘にそんなもの必要ないキーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
という親のもとで育った娘さんが婦人科を受診する心理的ハードルはいかばかりだろうか。
私は高校卒業後、まだ実家に住んでいた学生の時分にピルを処方してもらいに婦人科に通い初めたが、
ピルのことは学校の授業でも親からも教えられたことがない。そもそも初潮も誰からも教えられる前に来て、
パンツを血で真っ赤にしたまま何の病気だろうかと震えて小学校に登校したような有様だった。
結局私が自分の親に婦人科に通っていることと月経困難症改善のためにピルを飲んでいることを話したのは
30を過ぎてからだったと思う。同じく30代の従姉ががんのため子宮全摘した話を聞いた時だった。
娘を持つ親御さんには他人事と思わず、「生理が重い・つらい」は婦人科受診の十分な理由になり得るので、
健康管理の一貫としてしっかりと向き合うことで娘の命を、娘が将来子供が欲しいと思っているならその機会も含めて守ってあげてほしい。