2020-06-17

凍れる音楽

 優れた文章にあたると、いつもフェノロサの「凍れる音楽」の言葉脳裏に過ぎる。畳み掛けるように押し寄せる膨大な意味を孕んだ螺旋を、論理という強固な心柱が貫いて、文章に湛う勢いと熱量とをかろうじて留めている。弓の張り詰める緊迫と、海原の奏でるやわらかさとを一つの建築”に危うくも留めている。論理の鋭い槍は文字の隙間に流れゆく永遠の時をも凍てつかせ、反響する意味の雑音を収斂し、ひと纏めにして落ち着かせる。果たして、無機質に打ち付けられたインクの染みの集合体は、あくまで閑雅な面持ちで、触れがたい厳粛な意思を持ったかのように、悠久の時に曝されているのである

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん