2020-06-13

香川県ゲーム規制条例に対する国賠請求の勝ち目の有無

一月ほど前、香川県の現役高校生が同県のゲーム規制条例憲法違反だとして訴訟を提起する準備をしている、というニュース話題になりました。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200514-00010008-ksbv-l37

ネットではこれを応援する声が幅広く聞こえました。私が見た限り批判的な反応(「訴える暇があるなら勉強しろ」といったもの)はごく少数のようでした。

また、訴訟費用クラウドファンディングで集め、訴訟費用が集まり次第訴訟を行う、ということがニュース中で述べられていたため、クラウドファンディングに協力したい、という発言散見されました。

それでは、クラウドファンディング訴訟費用を集めるというこの訴訟、勝ち目はどれくらいあるのでしょうか? 私見ですが、報道を見た限りでは勝てると思える要素が見当たらないと考えましたので、以下、その理由を述べます

1.勝訴には損害が必要なこと

報道によると、想定している訴訟の種類は「国家賠償請求」ということです。

国賠請求には「訴えの利益」とか「原告適格」が求められないというメリットがあります特に、今回でいえば原告高校生が18才をこえて条例時間制限対象外になったとしても、18才になるまでに生じた損害について、問題なく訴訟を続けられるというメリットがあります

本件では他の訴訟類型訴訟要件を満たせそうにないと思われるので、国賠請求が認められるかが訴訟の成否を分けます

さて、国賠請求が認められるためには、原告に損害がある必要がありますが、本件の原告となる高校生保護者に損害はあるでしょうか?

2.高校生の損害がないこと

原告となろうとしている高校生は、どんな損害を受けているでしょうか?

まず、考えられそうなのは、「平日60分/休日90分を超えてゲームをできない」という損害です。条例制定前はこれより長い時間遊べていたのに遊べなくなったとか、ゲームを遊ぶ時間を増やしたかったのに条例のせいで増やせなくなったということがあればなんらかの「損害」を観念できそうです。それでは、このような損害は発生しているでしょうか?

これは、おそらく発生していません。なぜなら、平日60分/休日90分というのは家庭でゲームに関するルール作りをするときの目安に過ぎないからです。保護者が他の時間を定めることには制限がないですし、保護者ルールを定めなかったときも平日60分/休日90分というルール適用されません。

では、この高校生保護者は「平日60分/休日90分」といったルールを定めたのでしょうか? 保護者原告として参加することが予定されていることから、この高校生ゲームをすることに対して理解があるか、少なくとも条例に対しては批判的なことが分かります保護者条例に基づいてこの高校生ゲーム時間制限するようなことはしていないのではないでしょうか。

この高校生に「平日60分/休日90分を超えてゲームをできない」という損害が実際に発生しているとは考えにくいのです。

では、他の損害が何か考えられるでしょうか? 私にちょっと考えつきませんでした。(国賠訴訟では弁護士費用が損害として認められますが、それは弁護士費用以外の損害が認められることが前提です)

3.保護者の損害がないこと

高校生本人に損害がないとしても、保護者の損害は何かあるでしょうか?(保護者法定代理人として参加するだけで、独自の損害を主張しない可能性もありますが、念のため検討します)

上述したとおり「平日60分/休日90分」という目安はルールを作るときの目安に過ぎないので、「子どもゲームを遊ばせてあげられない」といった損害は観念できません。

では、ルールを作れ、と言われたこ自体が損害といえるでしょうか。これもまた罰則がないだけでなく、「努めるものとする」と努力義務しか過ぎないことが明記されていること、この努力義務違反が他の法令上の義務違反認定する要素として考慮されるパターンが想定しにくいことからすると、裁判所が損害を認めるのは難しいでしょう。

では、他の損害が何か考えられるでしょうか? 私にはちょっと考えつきませんでした。

4.クラウドファンディングお金を出そうと考えている人に考えて欲しいこと

当時の報道によれば、この訴訟クラウドファンディング訴訟費用を集める予定とのことです。香川県ゲーム規制条例には問題が多く、訴訟でその問題を明らかにしたい、という人は多いでしょう。

クラウドファンディングがはじまれば、報道されてる事情以上の事象も踏まえた説明や、国賠請求以外の方法検討して見込みがある旨の説明があるかもしれません。支援検討する人には、そういった事情説明を踏まえて、勝ち目がどれくらいあるもの支援しているのか、ぜひ自分で考えて判断した上で支援してもらいたいな、と思います

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