2020-06-04

人に熱心に教えるっていう事。

ポッと思い出したので書く。自分小学5年生まで自転車に乗れなかった。

それまでの生活で、学校も徒歩3分、友人も徒歩10分というようなせまーいエリアでの生活がメインだったかそもそも自転車に乗る必要が無かったというのが大きかっただろう。

小学5年生になると市内の公共施設に泊りがけでのイベントがあった。確か山奥の交流センターみたいな所だったと思う。

そんなイベントのメインイベントに、"ツーリング"というビッグイベントがあった。市の職員さんがインストラクター的な立場で参加するものだったが。

外の広場に集められ今日の日程やコース等が説明されていく。

マジで!?」と聞いてなかった俺は焦った。だって自転車乗れないから。事情を知ってる友人等はくすくすと笑っている。

そんな中「ちなみに自転車に乗れないって人はいますかー??」と職員さんが問いかけた。合計50人ぐらいの生徒の中、手をあげたのは自分オンリー。50/1ってそうそうないでしょうよ。

んで、今考えれば珍しくもないと思うんだけど、まさか小5になって自転車に乗れない子供がいるとは

向こうも思っていなかったらしく、もちろん補助輪付きの自転車も用意しているわけも無く「どーすっかな…」的な空気が流れた。

そんな微妙空気の中、インストラクター役の市職員の一人が口を開いた。

「でわ僕がこの子自転車を教えます。他の方は通常通りコースを進んでください」

と。そんな提案をしてきたのは、すごくわかりやすオタクっぽいオタク風体のお兄さん。

直毛剛毛なセンター分けヘアに、ぼつぼつとした肌に、なんとも言えないチェックシャツ。そして何より肥満体型。

ちょっと古いけど、コミケビームサーベルで参加するオタクの人が非常に近い。そんな感じ。

周りのクスクスが明らかに(笑)として響いている。なぜなら、自分肥満体型だからだ。

肥満児が肥満体型のオタクっぽい人から自転車を教えてもらう」

というのはもう、小5からしたら最高の嘲笑だろう。

というわけで49人は颯爽と自転車にまたがり次々とコースに出発していく。

その中で「肉どうしがんばれよーwww」「兄弟仁義wwww」「デブ同士wwww」等の心無いコメントをして出発していった

5人。今でも覚えてるからな。

みんないなくなった後、だだっ広い広場肥満児と肥満体が二人。空は非常に青く爽快。

いや、晴れすぎて若干暑い。今はまだ運動してないか大丈夫だけど、この天気の中運動をすれば

自分のような肥満体型はひとたまりもない。そんな無意識アラートも感じていた。

「でわ始めましょうか!あ、ちなみに大西仮名)です。よろしくね」

そんなこんなで肥満体型二人の自転車チャレンジが始まった。


さて、では実際にどうやって自転車を教えてくれたかというとよくある、自転車の後ろを掴んでのイメトレ。

ゆっくりとぎこちないながらも大西さんが荷台をガッチリ掴んでくれているので転ばない。

とはいえフルフルとおぼつかない肥満児(推定60kgぐらいだったと思う)の自転車を支えながら

並走するという行為がどんだけしんどいか。

「頑張って!大丈夫!しっかり!」と非常に前向きな声援をしてくれる大西さんだったが

振り返ると自分以上に必死オタク肥満体がそこに。

そっくりそのまま、その声援をあなたにお返ししたい所だ。

滝のような汗。剛毛すら汗でしっとりとしている。というかセンター分けの左右の先端から汗が滴っていた。

肥満特有の乳下の海溝型の汗ばみ。やばい。ちなみに大西さんの体型はたぶん100kgオーバーだったと思う。

そんな地獄のような自転車チャレンジ必死に続けた。

途中、大西さんが自転車は何故倒れないかという事を教えてくれたのを覚えている。

要は遠心力云々の話で、バイク等の二輪にも言える事なんだが、そんな理論的な事を小5の俺にわかやすく教えてくれた。

まりにわかやすかったので今でもはっきり覚えている。

休憩等をはさみつつも約1時間半ほど続いた。もう後半からマジで大西さんの方が心配になるレベルだった。

「がバッ!!がばっって!頑張って!ハァハァhxaa!!だじょーぶ!だじょーぶ!ゼェゼェゼェ!!!!」

もう、大西さんの顔にアワワワとなった。

「よし!そろそろ!手を離すよ!ゼェゼェ!さっきの、遠心力は覚えて!るね!!だじょーぶ!絶対に!倒れないから!ハァハァヒィ」

そういうと、大西さんは荷台から手を離した。

「あわっわわわわわ!!!!!」とふらつく自分。それを見て大西さんはダッシュで並走しながら

こいでこいでこいでこいで!」と必死に声をあげた。

そんな中、これまで1時間以上、肥満体型がダッシュしてきたわけで、大西さんももう、ヘロヘロのぐでんぐでん状態

足がもつれて、ギャグ漫画ばりにダイナミックにコケた。

ズザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

振り返ると土埃にまみれ大西さんが地面に倒れている。

「お、お、大西先生!!!!!!!!!!!!!!!!!!(ちなみにいつのまにか先生と読んでた)」

すると大西先生は、顔だけをこちらに向けて

「行ってーーーーーーーーーーーーー!!!!行ってーーーーーーーーーーー!!!ふりかえらずにーーーーーーーー!!!!」

と、何の映画だと言わんばかりにドラマティックに叫んでいた。

「は、はいいぃいーーーー!!」と大西先生の気迫におされ自分必死ペダルを漕いだ。

すると、フラフラと揺れていた車体が安定し、自転車は軽やかに走り出した。

その時の感動は今でも忘れない。ET自転車のシーンぐらい感動的だった。いや、正確にはETを見た事無いので

完全に雰囲気なんだが、たぶんあのシーンくらい感動的だった。

風が気持ちよい。これまで流し続けた汗が風にあたり余計に気持ち良い。

あの時程、「頑張る」という事を体感した事はその後の人生でも無かったかもしれない。

まりの感動に無意識に5~6周していたと思う。われに返り大西先生の元に戻る俺。

先生はそのまま地面に顔をつけながら、颯爽と漕ぐ自分をずっと見守っていてくれたようだ。

「せ、せんせい!!!!乗れた!!!!!!ありがとう!!先生!」

戻った俺は、先生最大級感謝を伝えた。小5までの短い人生で、人にここまでありがとうと伝えた事は無かった。

本当に嬉しかった。地面にうずくまっている肥満体型の人に感謝を伝えてるシーンがなかなかシュールではある。

そんな言葉を聞いた大西先生は、一呼吸おいてゆっくりと立ち上がった。

そして一言「おめでとう…!!」と満面の笑みで答えてくれた。

そして、その大西先生の両肘、両膝はびっくりするぐらいの鮮血が流れていた。

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