2020-05-04

猫の名前

寒い冬の日にじいちゃんちの車庫に猫が現れた。

かわいそうだから冬の間だけと言って、毛布をもらい、エサをもらい、春になる前にはじいちゃんからヘンテコな名前をもらい、じいちゃん家族になった。

ばあちゃんを亡くして寂しくしていたじいちゃんは猫を死ぬほど甘やかした。

猫はじいちゃん以外の下々の者たちの全てをガン無視し、じいちゃんが家にいればそば優雅に寝そべり、出かける時は玄関まで見送り食事の時はじいちゃんの膝に乗り、寝る時はじいちゃんの寝室の前で、夜伽を待つお姫さまの様に待機していた。


そしてじいちゃんボケた。

どんどん物忘れがひどくなり誰の事もわからなくなってそのうち野良猫が家に入って来ると言っては猫を家から追い出すようになった。

家の外でオゥオゥと哀しみにくれる猫の声を聞いて、同居の家人が慌てて猫を家に入れる。じいちゃんにも何度も説明する。でも家人の隙を見てじいちゃんは猫を追い出す。

それを繰り返すうちに猫はもう家の外で待つのをやめてどこかへ行ってしまった。

じいちゃんもその後すぐに、猫のことだけでなく何もかも忘れてとうとう命を忘れてしまった。

今頃ばあちゃんと一緒にいるだろうねと皆で言いながら、じいちゃんの遺品を整理していると、大切にしまってあるものの中に結婚前のばあちゃん文通していた時の手紙が出てきた。


茶色くなった便箋の中で2人は、2人だけに通じるあだ名を付けあっていた。ばあちゃんは、そんなあだ名は嫌ですネ!と達筆で言いながら、ばあちゃん手紙最後はいつも猫と同じ名前で締めくくられていた。

  • とても良い。 あえて指摘するなら、最後の一文で「ばあちゃん」と二度表記してるところ、重ならない言い回しだったらもっと良かった。

  • ありがとう。嬉しいです

記事への反応(ブックマークコメント)

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