2020-04-19

この物語フィクションです

わたし接客アルバイト歴○年。声の大きさと語尾の長さなら負けない自信があります

「いらっしゃいませぇ~~」

平日であまり人は多くありません。一人一人しっかりお顔を見ながら接客していきます

マスクでキメた中年男性がやって来ました。マスクといえば「白!」というイメージがあるので、シャレて真逆の黒を身に付けているのでしょうか。最近よく見かける色です。どうにもわたしにはカッコいいとは思えないのですが……。

お客様は無言でレジ商品をどさどさ置いてスマホをいじっています

「お会計○○円でございますぅ~~~」

釣りを渡そうとした瞬間、お客様はささっとズボン社会の窓をなでて手を出しました。わたしは見てしまいました。ハッとして反射でレシートを重ねて自分の手を保護すると、素早くお金を渡しました。

男性はいかにも憎しみを込めた目でわたしにらみつけると、小さく舌打ちしてレジ袋をつかみ、がに股で去っていきました。

たまにいるんですよね。監視カメラにばっちり録画されていても平気で下品な行動をする人。

しかしわたしの心の底にはどろどろした嫌悪感が生まれしまい、お客様背中がお店のドアの向こうへ消えていくのを一瞬見送ると、煮えくりかえって顔が歪みました。

キイーーッ!

数十秒後にとんでもなくかん高い音が外から聞こえてきて、仕事を続けていたわたしはびっくりして手を止めました。その時相手をしていたお客様と顔を見合わせて音のした方をのぞきますガラス窓の向こうに車が一台見えました。白い車、黒塗りの高級車、どちらだと思いますか。

どやどやとお客様磁石のように引き付けられて何があったのか見極めようとしています。ぷつりとレジが空いてしまったので、わたしはそっとその場を離れ、手近にあった花瓶から内装飾用の造花を衝動的に一本引き抜きました。黄色ひらひらした花です。

さよなら!」

わたしは花にキスを送ると、ブチリと茎からもぎ取ってゴミ箱に棄てました。

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