2020-04-03

ゲーム規制条例への誤解④ プレイ時間制限実装しないといけない

香川県ネットゲーム依存症対策条例について、同条例対応するためには、オンラインゲーム提供する事業者香川県から接続、あるいは香川県民による接続を把握し、プレイ時間が60分に達したらこれを切断しなくてはならなくなる……という理解が相当広まっています

例えば香川県民の利用を「お断り」するとの方針を掲げて話題になっているどどんとふ公式サーバーの設置者は以下のような見解を述べています

位置情報IPアドレスなどから香川県から接続かどうかを確認してプレイ時間制限などを実施する」という対応については、(どどんとふ公式鯖では)位置情報接続IPアドレスも取得していませんし、誤判定や不具合が発生する可能性もありますどどんとふ以外にも複数TRPGを楽しむためのツール提供していますので、それら全てを問題条例対応するには、開発・維持のためのスキル時間的・金銭リソースもないため現実的には不可能です。 https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2004/02/news135.html

位置情報IPアドレスなどから香川県から接続かどうかを確認してプレイ時間制限などを実施する」という対応について「問題条例対応するには」という文脈で論じていますので、条例対応するためには、プレイ時間制限を設けることが必要になる、という認識であることが分かります。(今回はどどんとふ公式サーバー設置者の見解を取り上げていますが、同様の見解ネットでよく見られるものです)

しかし、ゲーム規制条例には事業者接続時間制限を設けることを求める規定はあるのでしょうか? 実際には、ありません。

そもそも平日60分休日90分というプレイ時間の「目安」がでてくるのは、条例の18条2項で、これは家庭内ルール作りについて条文であってゲーム事業者義務を定めたものではありません。しかもこれは「目安」に過ぎず、ルールを定めなかった家庭や、別の時間を定めた家庭には適用されません。家庭ごとの定め方に限度は定められていませんので「平日は水曜日だけだけど11時までに寝れば時間制限はなし」とか「平日は禁止だけど、土日のどちらかは6時間までやっていい」とか「宿題を全部片づけていれば、時間制限なし」など、いくらでもバリエーションがありえます

さらにその対象は「ネットゲーム依存症につながるような」コンピュータゲームに限られます

過去記事ゲーム規制条例への誤解① 60分超えてゲームしても条例違反ではないよ anond:20200318234417

オンラインTRPG条例のいう「ネットゲーム依存症につながるような」ものだと当然にはいえないでしょう。オンラインTRPGそもそもコンピュータゲームでないという解釈もありえるところです。(ただし、強制力のない条例なので、このあたりの解釈はいつまでも定まらいかもしれません)

さて、ゲーム事業者に求められている義務について、条例11条1項と2項をみてみましょう。これがどれだけ香川県外の事業者適用されるか(そもそも適用する権限香川県にどれだけあるのか)は明確ではなく、慎重な議論必要なところですが、そもそも強制力のない条例なので、裁判になったり行政処分が行われるなど、精密に検討される機会が訪れず、いつまでも明らかにならない可能性もあります

その点はとりあえずさておき、香川県から香川県民がアクセスするようなオンラインゲームには適応される可能性がある、という前提で検討していきましょう。

11インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームソフトウェアの開発、製造提供等の事業を行う者は、その事業活動を行うに当たっては、県民ネットゲーム依存症の予防等に配慮するとともに、県又は市町が実施する県民ネットゲーム依存症対策に協力するものとする。

「県又は市町が実施する県民ネットゲーム依存症対策に協力するものとする。」あたりは、県内事業者しか想定していない条例での書き方をなぞっている感があります。たとえば、香川県内でコンピュータゲームを売っている事業者は、店舗内にゲーム依存症に関する県や市のポスター掲示することを求められたりする姿が容易に想像できますね。

さて、「依存症の予防等に配慮」や「依存症対策に協力」という概括的な条文から提供するゲーム時間制限を組み込め」という具体的かつ負担の重い行為をしなければならないと求められている、と読み込むのは無理です。18条で具体的に目安のプレイ時間を挙げるくらい詳しく規定しているのに、こちらではプレイ時間に関する言及が一切ないことからすればなおさらです。

2 前項の事業者は、その事業活動を行うに当たって、著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲーム課金システム等により依存症を進行させる等子ども福祉を阻害するおそれがあるものについて自主的規制に努めること等により、県民ネットゲーム依存症に陥らないために必要対策実施するものとする。

11条2項は「ネットゲーム依存症に陥らないために必要対策」の中身として「著しく性的感情を刺激し、甚だしく粗暴性を助長し、又は射幸性が高いオンラインゲーム課金システム等により依存症を進行させる等子ども福祉を阻害するおそれがあるもの」について「自主的規制に努めること等」というもう少し詳しい説明がされていますゲーム依存症に関する考慮だけでなく性的だったり暴力的だったりするゲームに関する青少年健全育成的な観点が混ざっている気がしますね。

そして、プレイ時間に関する規制については触れられていません。「性的」「粗暴性」「射幸性」といった要素については明示的に自主規制を求めているのに、18条に詳しく記載しているプレイ時間について触れていないということは、11条はプレイ時間に関する自主規制は求めていない、と読むのが素直です。そもそも、18条ではゲームプレイ時間は各家庭で定めることになっており、オンライン業者が一律に60分/90分の制限をもうけることは各家庭で定めたルールを守らせることに直接つながらないことを考えるとなおさらです。

他の条文にも、ゲーム事業者に対してプレイ時間制限を求める根拠となりそうなものは見当たりません。よって条例対応するために、プレイ時間制限を設ける必要はないといえます

余談:どどんとふ公式サーバーでは「アダルトや過度な暴力表現などのR18コンテンツ」についてすでに禁止しており、射幸性が高い課金システムもないのですから(というか、無料なので)、仮に11条2項が適用されると解釈しても、「もう対応済み」といいやすいように思います

過去記事

ゲーム規制条例への誤解② どどんとふ公式サーバーの件 anond:20200403002428

ゲーム規制条例への誤解③ 香川県民はどどんとふ公式鯖が使えない anond:20200403121757

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