2020-03-20

不完全という魔性

はじめに

「何かが欠けている」ものに魅せられたことはありませんか?

美しいもの,輝かしいもの完璧もの,こうした理想的な,最上級存在に,心の奥底で物足りなさを感じたことはありませんか?

だって考えてみてください.

完成したパズルを眺めるよりも,欠けたパズルを埋める方が楽しいのですから……

さてさて,ここでは存在の「キャラクター性」について考えていきたいと思います

友人,先輩,後輩,恋人などなど,限定しません.

尊敬愛情など,好意の形は多種多様です.それら全てを包含しましょう.

ただ今回については,恋というとてもシンプル言葉でそれらを置き換えることを許してください.

さあ始めましょう.

あなたに問います

その想いは,本物ですか?

なぜ「理想的でない」存在に惹かれるのか

あなたが今,誰かに魅了されているとしたら,その最も大きな理由は「人間らしさ」にあることでしょう.

この「人間らしさ」という表現を,筆者は不完全さとして解釈します.

例えばドラマアニメのような作品ではについて見てみると,多くの場合,注目するそのキャラクターの美しい部分や輝かしい部分にスポットライトを当てています

夢物語です.

光の当たる部分しか映らないそれは,ただ美しいだけの何かに過ぎません.

から作品の中では,暗い過去や後ろめたいものを見せつけます.時には不快なくらいに.

でもそれが,裏腹にもあなた好意煽動しま

「美しさ」と対をなす「醜さ」こそが,人物の不完全さであり,キャラクターを味付ける最高のスパイスです.

想い人という鏡

過度に美化された存在への好意は,決して成就しません.

聖人たりえる存在への好意は「恋慕」と言うよりは「憧憬」に近く,あなた同類聖人でない限り,その隣に立つことを,いつかあなた自身が拒むからです.

初めのうちは,問題など生じません.

あなた自分にはない相手の美しさを素直に受け入れ,憧れ,そして惹かれる.ただそれだけの自然な営みです.

しかしながら,人の心は厄介なもので,恋愛感情における憧れは,単体では長続きしません.

過ごす時間存在する空間,共有するものが増えるほど,あなたと想い人は存在として重なり,そして残酷にもその差異を明らかにします.

心の距離を近づけようとすればするほど,想う相手あなたの鏡となり,あなたの美しさ,そして醜さを浮き彫りにします.

あなたがどう想おうと.想い人がどう想おうと.

共有するもの全てがあなたを量ります

あなた相手を想うほど,あなた相手の美しさを知り,そして自らの醜さと対峙しなければなりません.

これは人が人を愛するために避けられない呪いです. 

信頼と対なす負の告白

古くから知られるように,醜さを持たない人は稀です.

あらゆる宗教経典で取り上げられる程度には,ありきたりなものなのでしょう.

否,醜さを持たない人を「人」と呼ぶことそのものが不適であるかもしれません.

自らの醜さを自覚した人は,次の行動として,それを相殺するために相手の醜さを探します.

だって私たちは愚かで,美しさを比べるよりも,醜さを比べる方が楽ですから

裏を返せば,「自らの醜さを相手に示すという行為は,信頼の究極的な表現の一つ」と捉えることができるかもしれません.

人が人に好意を持つきっかけは,無数に存在するでしょう.

優しくされたとき,笑ってくれたとき,ただ隣にいてくれたとき……

でも,その想いが加速する瞬間は決まっています

相手の「弱さ」や「脆さ」を知ったときです.

「醜さ」という単語はそれらを包含することでしょう.

あなたの中に芽生えたその想いは皮肉にも,相手の「醜さ」を知ることで育ちます

好意勘違い

ここで,私たちは時折,致命的な勘違いします.

意図的か否かを問わず,「醜さ」を出会って初期の段階で見せられたとき好意を得ているのではないかと感じてしまう,勘違いです.

例え事故的であったとしても.

本来追うべき順番を間違えているとも気付かずに.

この勘違いは本当に偶発的に起こり得ます

現実でも,作品の中でも,容赦なく無意識作用します.

さあ考えてみてください.

その想いは本物ですか?

それとも,自分の誤解に騙されていませんか?

付録】「非理想的」の崩壊

残念ながら「醜さ」もまた,長続きするようなものではありません.

置き土産として,これについての2通りの解釈提示しておこうと思います

もし時間の経過とともに,あなたの想いが薄れるようなことがあれば……いえ,ないことを祈るばかりです.

過度な「醜さ」は本当に醜い

魅力としての「醜さ」の一線を越えてしまえば,それはスパイスでも何でもありません.

ただの味付けに失敗した出来損ないの料理です.

欲をはじめとするあらゆる醜さは,それ単体では何ら加点要素となりません.

裏を返せば,伸びしろばかりとも言えますが,果たして成長を待てる人はいるでしょうか.

あなたは待てますか?

想う相手は待ってくれますか?

先の章で,「醜さ」をあたかも良いもののように誤解なさらないことを希います

まあもっとも,長い時間自らの醜さを隠し通せる人なんて,そう多くはないでしょうが

成長という欠落

反対に,あなたの想う人がどんどん理想的になる,というシナリオも考えられます

そのときあなたはその事実に耐えられますか?

あなたの求めていたものがもし「醜さ」に起源するものだとしたら,きっとその想いは冷めることでしょう.

知らずのうちに,孤独感,劣等感が増し,好意が薄れていく……そうなるかもしれません.

しかしここで悪い人は一人もいません.

全員が善処し,そして不幸になるだけです.

から誰も責めず,誰からも責められることはありません.

安心してください

あなたに残された選択肢は二つ.

美しくなりゆく相手を赦せずに関係を絶つか,自らの醜さを受け入れ向き合うか.

何人もあなた決断を妨げることはないでしょう.

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