私自身は見ていないのだが、タイトルやSNSでの感想を見る限り、現場で命を賭けて闘う所長を始めとする東京電力の職員たちを礼賛する映画とお見受けする。
中には「この映画を見ている間、ずっと泣いていた」とのたまう有名人もいるようだが、そもそも東京電力が大地震や津波への対策を取らずに原発を作ったところに問題があるのではないのだろうか。映画でも内閣総理大臣や東京電力幹部は無能の邪魔ものとして描かれているようだが、現場でリーダーを務めた吉田所長は福島第一原発の建設にも携わっていたようで、ある意味自分の判断ミスの結果を自分でひっかぶっただけではないんだろうか。
私はFukushima50を見ていないし、事故発生時の福島第一原発の状況もよく分かっていない。ただ、原発事故のような緊急を要する事態に限らず、普通のスポーツ大会レベルのイベントでも内閣総理大臣や皇族が来ると警備にあたる警察がうるさくて現場のリーダーが迷惑するということは知っている。
さっきネットで調べたら菅直人の味方らしき人が「あの映画に描かれているのは菅直人ではない。言い逃れのように名前を出さずに内閣総理大臣と肩書きだけ描いているが、見た目だけでなく行動や言動が本人と全然違う」とお怒りであったが、仮に映画に描かれている内閣総理大臣よりも菅直人が冷静沈着だったとしても、現場の対応でいっぱいいっぱいのところに、いろいろな気遣いを必要とするVIPを送り込む政府と東電幹部は全く空気の読めない最低な奴らではないのだろうか。
なぜ映画を見ずにここで感想を聞くかというと、私はお涙頂戴系の映画などに弱く、上記のような疑問を持っていてもあの危険極まりない原発の中で闘った人々のドラマを見ると泣いてしまいそうだからだ。以前、「永遠のゼロ」を見て泣いたという話をSNSに書いたところ、「ずいぶん素直だこと。あの映画は戦争をキレイに描きすぎ」とバカにされたので、冷静にあの手のものを見られる人の意見を聞きたい。
でも永遠のゼロもFukushima50も、人気俳優やタレントをこれでもかと使って商業ベースで上映する以上、分かりやすくカッコ良い主役とアホで駄目な敵役は必要だし、目を背けたくなる悲惨な現実を描くのはほどほどにするんじゃないかと思うんだけど。