2020-01-29

犬の思い出

大学生の時、鹿児島離島バイトをやっていた。

民宿の泊まり込みで夏休みうぇーいしてくる連中の相手仕事内容で、

時々、男同士で喧嘩や、レイプまがいの事件もあったりしたが、それ以外は平和だった。

ある時、民宿のまわりを野良犬がやってくるようになってきた。

ビーグルのような灰色茶色雑種

誰かが餌付けしちゃったようで、また餌でもくれるのかといった顔をしてやってくる。

痩せてかわいそうなので、時々飯をあげていた。

ある時、5人づれの女子大生が1週間泊まりに来た。

そのうちの赤いネガネのふちをしたオタクっぽい女の子が一人が犬嫌いだった。

僕は彼女が好きになった。

ごはんをたべてから、浜辺でふたりきりになって盛り上げっているところにその犬がやってきた。

女の子は犬が気になって仕方がなくないようで、ちらちら見て、

なんとか犬をやってほしいと懇願してきた。

犬をどうにかして。お願いどっかへ犬をやって。ああ、犬が怖くてしょうがないということだった。

僕はその辺にあった流木を片手に近寄った。

犬はまた餌でもくれるのかとおもい、

無邪気に、はーはーと舌をだして僕に近づいてきた。

若さとは性欲のことだと思う。

僕は流木をおもいっきり振りかざし、犬の頭をめがけて殴った。

犬を殺って欲しいから、犬を殺るのだ。

鈍く頭蓋骨が折れる音と、波の音がかさなって目の前の死んだ犬が現実のものじゃないような気がした。

生きていれば動物なのに、死んだら物体になるのが、

不思議哲学的ななにかを得た気分になっていた。

メガネ女の子は、目の前で犬が撲殺された事実が、

急に怖くなったのか、そそくさと逃げていった。

僕はおいかけることもなく、棒をもったまま呆然と立ちすくした。

その日は何故か勃起したまま収まらなかった。

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