今日は昨日の人とシフト交換をしての勤務だった。出勤するなり、今日の相棒であるフリーター男子が、
「昨日も例の客来てましたよ。やっぱり増田さんの言う通り、増田さんの出勤日に合わせて来てるんですねぇ」
と言った。
例の客というのは、私に「お願いします!」の一言で、全ての注文を出させる人だ。私が以前勤めていた、六キロ以上離れた所にあるコンビニの常連客だったのだけど、私が移ったのを知って以来、こっちに通うようになった。そんなお客さん。
その人は、煙草やコーヒーなど、毎回同じ注文をするのだが、かといって私以外のバイトに注文を覚えてもらおうとは思わないらしい。
一、二ヵ月くらい前は、その人が「お願いします!」で注文を済ませることに、特に何とも思わなかったのだけど、正月のちょっと暇な時期に、暇なせいで気付いた。この人、わざわざ私のレジが空くまで待ってるのか、と。
確か、以前は私のレジが空いてなかったらもう一つのレジで会計済ませて帰っていってたんだけど、今は私の手が空くまで店内をうろうろしている。そして、この間、かなり忙しかった日は、店内をそうとうな時間うろうろした挙げ句にお茶一本余分に買うという謎行動をしていた。隣のレジでフリーター男子が「どぞ!」って呼んだのを断ってまで、こっち来た。
それくらい、私に「お願いします!」の一言で全て出させることに執着している人だが、かといって、私のことは別に好きな訳ではなさそうだ。
そのお客さんは、去年、私が以前働いていたお店のバイト仲間だった、若くて可愛い女の子をめちゃくちゃ可愛がっていて、その子の為に恵方巻を大量注文した。なお、女の子はその後、意味不明な理由で店を唐突に辞め、失踪した。(といっても他のバイト仲間とLINEで繋がっていたので、消息はふつうにわかっていた)
そんなことが、あったのだ。
そんなことがあったので、もしかしてあのお客さんは、隙あらば私から失踪した女の子の行方を聞き出そうとか、企んでいるのだろうか?
と、私は想像している。
今日はあのお客さんは来なかった。フリーター男子は、「きっと来ない」と予想していたので、予想が当たってちょっと嬉しそうだった。