田舎が嫌いだ。いじめたこともいじめられたこともなかったが、学生の頃から地元の人間の馴れ馴れしさが、図々しさが気持ち悪かった。高校から逃げ出して県外に通ったけど、出身地を聞かれると適当に濁してしまう。転勤族で、とか。本当は引っ越しなんかしたことないのにね。たまに嘘もつく。できるだけ方言を使わずに過ごしてきたから、言葉もさほど汚れてはいないだろう。少なくとも、出身地を類推できるほどには。
大学も都内、就職も都内。田舎とは無縁の暮らしをしていたはずだった。それなのに、彼女に言われてしまった。都内生まれの彼女。「子供ができたら、あなたの出身地で育ててもいいよね」流石に彼女には出身を教えているが、嫌っていることも知っているはず。なのに、適度に田舎な方が育てやすいように思えるんだそうだ。要らねえ。子供も田舎に住みたがる女も要らない。話せばわかってくれそうな人だと思うが、そういうふうに思う女だってことが無理だった。果てしなく要らねえ。はあ、未だに出身の呪縛に囚われている自分が嫌だよ。
なんだかミステリー文学の導入っぽいな。
それ、彼女の方も地元が嫌いで離れたがってるんじゃないの