超面白い設定やらガジェットやら考えたぜカッコイーってのもあるかもしれんけどさ
多くはそうじゃないんだよな
あれは精密な思考実験の場なんだよ
お前らってひねくれてるからすぐ「大声で叫んで気付かせればいい」「横に退避させればいい」とか第三の選択を考え始めるだろ?
それで、左右は切り立った崖であるとか声の届く場所にはいないとか色々前提を付け加えるんだけど、
あの問題の根幹の部分ってのはさ、「1人を犠牲にすることで5人の命を助けることをどう評価するか」っていう限りなく抽象的な課題を
いくらかでも現実的な舞台に落として考えやすくしてくれているわけだ
舞台を宇宙とか未来とか極端なところに移してみたり、はたまた並行世界で好きなように物理法則を作り込んだりすることで
「本当に考えなければならない部分」をちゃんと考えさせるようにできている
トロッコ問題だって、SFの舞台設定であれば、前提へのツッコミや第三の選択を生じさせることなく「5人か1人」を間違いなく選択せざるを得ないように
作り上げることはいくらでもできるだろう(というか、似たような作品は実際あるしね)
しかも読者は物語の中に感情移入しているせいで、思考の放棄すら許さないような状況にさせられている
SFで行う思考実験というのは本当に色々なものがある。人間の定義を問うようなものとか、自己の存在について疑問を投げかけるもののような深淵なテーマから
「人間の遺伝子組み換えが可能だったら」「未来予測が高精度で行える世界における生命保険はどうなるか」みたいなわりと社会に接続しているものまで
物語の中でそれぞれの思考実験専用の前提を組み上げ、それを考えざるを得ない物語を描くことで、読者に思考実験への参加を強制している
それがSFというジャンルの共通的な特徴であって、宇宙とか未来とか並行世界とかガジェットそのものがSFという世界を成しているわけではない
それはよい理解だが、そういうSFはマレだぞ。