年単位でセックスをしていない時期が続いた後、時間と移動の自由が利くようになったのが、去年の年明けのことだった。
この問題は自分の精神衛生上、無視できない程大きくて、どうにかしないと死にたくなりそうだったから、対策を立てることにした。
具体的には、風俗に行き、出会い系サイトを使い、Tinderを使った。
風俗については、たまたま大阪に出向く用事があった際に、定評のあるグループの旗艦店にお世話になった。
相手をしてくれたのは、ちょっと疲れた雰囲気のスレンダーな垂れ目の美人で、昼間は教育関係の仕事についているのだと言っていた。
僕は恥を忍んで乳首が弱いことを伝え、受け身になるからたくさん攻めてくれるようお願いしたのだが、あまり上手ではなかったので、結局攻守を交代した。
「唾液が衛生的にムリ」と風俗のプロとして、サービス中に客に対して言うのはどうなんだと思わせることを口にしつつも、スレンダー垂れ目お姉さんは、なんだかんだで適宜上手に喘いでくれて、最後には痙攣したような素振りまでしてくれた。
全部が終わった後、プロらしく、手を抜いていないなあと感じたが、何だかあまり楽しめずにもやもやが残ることになった。
その時は気が付いていなかったが、それは要するに射精の満足度が低かったのである。
英語で言うとQuality of Ejacuation。
略すとQOEになる。
QOEは、当時の僕のQOL(Quality of Life)を構成するとても大きな要素だった。
時間と移動の自由が利くうちに、手っ取り早くQOEを上げたかった僕が次に使い始めたのは出会い系サイトだった。
ガラケーの時代から定評のある有料出会い系サイトにいくつか登録してみたのだが、まったくもって上手くいかなかった。
当時の僕は知らなかったのだが、どうもサイトごとにまともな異性と会うための所定の作法があるらしく、それがわからないままでは何をしても、時間とお金を浪費するだけだった。
そうこうしているうちに、時間と移動の自由が利く時期は終わり、仕事の関係で東南アジアに行くことになった。
僕は日本に特化した有料出会い系サイトから、世界的に有名なマッチングアプリであるTinderを利用することに戦略を変えた。
東南アジアでのTinder活用については、海外ナンパクラスタの方がいくつかブログに書いている。
タイとフィリピンでの活用の事例が多く報告されていたが、国が違えば言語も文化も違う。
英語でのやりとり、自分が慣れ親しんだ日本の文化、現地でのデートのお約束。
何もかもがわからない中で、とりあえず飛び込んでみることにした。
詐欺と言われても仕方ないくらいに写りのいい写真のおかげか、ありがたいことに複数の女性とマッチングした。
メッセージのやりとりが盛り上がり、実際に会ってみようことになる。
自分にとってアウェイである旅先でのデートプランは、どこかぎこちなさが残った。
結局、会ってくれた女性の行きたいところに行くことになった。
現地の物価水準からすればちょっと高めのご飯を食べて、夜景なり水槽なりを見ながら酒を飲み、手をつなぐ。
見つめあい、場合によってはキスをして、僕の部屋に行こうと女性を誘う。
何もかもが数年ぶりのことで、緊張した。
会ってくれたうちの女性の一人には、そんなに震えながらキスされたらこっちが困ると苦笑されたほどだった。
人として、ロクでもないことをしたという自覚はあるが、とりあえずの問題は解決したので、満足している。