Twitterを始めたのは中学生ぐらいだった。もう10年程前の話だ。
趣味の繋がりを求めて飛び込んだが、周囲は成人や社会人ばかり。同年代の子はいなかったし、一回り違うなんてザラだ。
交流を持ってくれた人たちの中にAさんという人がいた。
Aさんは自分が中学生だった頃合いに大学生ぐらいで、好きなものに全力な人だった。自分もそんなAさんにある程度なついていた。
数年程してAさんは就職した。だがこの辺りから話がおかしくなっていった。
Aさんは「こんな汚い手段で手に入れたお金で……」という前置きを多用し始めるようになったのだ。
それで趣味に課金する時も、自分磨きにお金を使う時も、甥にお年玉を与える時も、その前置きを使って渋るようになった。
Aさんが具体的にどのような仕事をしていたのかは分からない。だがこんな言葉が出てくる段階でまともな仕事ではないのは明らかだ。
日々の愚痴も増え、明らかにダウナーになってしまったAさんを見ているのが、こちらとしても精神的にだんだん厳しくなってきていた。
この段階でもまだ高校生ぐらいだった自分は、その頃年齢相応にイキり散らしていた。THEネラー高校生って感じだった。
この世に蔓延る馬鹿を見下し、自身の正義感こそが絶対であり、いつも世界を嗤っているみたいな厨二思想にとりつかれていた。
そんな自分に対し、Aさんは空リプで「増田さんは昔の自分に似ている……」と度々送ってきた。
ろくでもない職業に就いていると思しき人間に似てると言われたのは、イキリ高校生には最大の侮辱のように感じた。
なんだそれは?ふざけるな、まるで同じ末路にでもなると言いたげだな?と解釈してしまった。
いつしか何かを呟く度にAさんは空リプを送ってくるようになった。「稚拙な考え方だね」とか「それはどうかと思う」とか批判もあった。
Aさんには数年来仲良くしてもらった恩もあった事から、簡単に交流を断つのは気が引けた。
だからAさんのフォローを切ったのは、軽犯罪ツイートというきっかけがなければ出来なかっただろう。
軽犯罪と言っても、例えば「チャリで右側を走る」とか「違法サイトにあるアニメを視聴している」みたいな
法律違反ではあるけれどやってる人は沢山いるし、実際にそれで刑罰を受ける人は滅多にいないければ、それだけで通報するのも馬鹿馬鹿しいような、
そういう立ち位置の犯罪をAさんが過去にやった事をはっきり明言した事だった。
そのタイミングでフォローを切った事で、あたかもその発言のみによって幻滅したようにみせかけた。情けないけれど、こうでないと出来なかった。
今思えば、Aさんは自分にマウントを取る事で心の傷を癒していたのかもしれない。
まともな職業ではないAさんがマウントを取れるのは、年下(でしかもイキリ)である自分ぐらいだったに違いない。
そして仲間を求めていたのかもしれない。自分に似た子供が同じ穴に落ちてくる事を願ったかもしれない。
と大人になって改めて考えてはみるけれども、それでもやはり当時の自分が逃げた事は正解だったと思う。
やはり未成年が喋るたびにマウンティングしてくる人の傍にいるべきではないからだ。
先日法事があって親戚一同が会して自分の職業の話をしている時に、ふとAさんの事を思い出した。
あの時のイキリは無事に人前で堂々と喋れるような職業に就けたよ。