豊かになれば時間にゆとりができて暇が出てくる。この暇をもてあますことのない人はよいが持て余してしまうと苦痛に身もだえしてしまうことにもなる。豊かな生活も楽ではない。自由な時間を持て余すことになろうとは。自由とは案外重いものなのだ。
会社を辞めてこのことを初めて実感した。朝起きて何も強制されていない。好きなように生きてよいとなると、なんと苦痛を感じてしまうのだ。これは経験するまで想像もわできなかった事態である。自由とは意外なことに軽いものではない。自由からの逃走について、それを欲する人間というものについて体で理解できた瞬間だった。これだけでも会社を辞めた価値があったというものである。