2019-11-14

文学先生三島由紀夫

anond:20191011152715 の続き。

その授業は全くといっていいほど、眠くならなかった。

先生は結局、自分の好きな作品語りで講義時間を使い果たしてしまった。ただ好きな著者や作品を語るだけの、講義と言えるかよくわからない時間だったが、俺は数式を写すよりも楽しくその内容をメモしていた。一番のお気に入り三島由紀夫の「金閣寺」らしい。著者の切腹エピソードなども挙げ、その不思議人間性の話を、重く、楽しそうに語っていた。

終了時刻に近くなると、急に我に返ったようになり、先生プリントこちらに配った。一枚目アンケート用紙で、二枚目文学入門書の序章の写しのようだった。先生アンケート用紙について「それ提出したら、帰っていいよ」と呟き、また入門書の写しは次回までに読んでくるように、と指示した。しかしこの入門書が、なんというか、堅苦しくて読みづらそうでげんなりした。その文章の塊を横目に、俺はアンケート用紙に手を伸ばした。

文学とは何ですか?」初っ端からのこの質問に、俺は手も足も出なかった。

え、文学ってなんなの?

俺は文学という科目を履修登録したくせに、文学については何も知らなかった。「文学」と称されるもの自発的に読んだものといえば宮沢賢治の「注文の多い料理店」とか、三島由紀夫の「美しい星」とかだ。読んだは読んだ。でもだからといって文学が何かなんて、よくわからない。傑作とされた小説が、文学なのか?それともたくさん売れた、読まれ小説文学なのか?普段本を読まない人間には、よくわからない。

そう思いながら俺は尤もそうな、うわべだけの説明を書き入れた。

他にも「好きな文学はなんですか?」「好きな言葉は?」「ノーベル賞を渡したい人は?」などと質問があり、モヤモヤする答えをひねり出しては、消しては書いてを繰り返した。最後質問に関してはいくらか浮かんだが、著名人なのに漢字で書けないのは嫌という変なプライドが頭を持ち上げて、結局漢字が分かる三島由紀夫にした。先生みたいに強い思い入れもないのに、いいのか?なんて考えていると、終了時刻になってしまったので、結局そのモヤモヤを残したまま、アンケート用紙を提出した。

記事への反応 -
  • 当方理系の学生だが、意識の低い履修登録の結果、文学の講義を取ることになった。 卒業に必要な一般科目の単位は足りていたが、1つは楽しく受けれる講義があればいいな、と思い履修...

    • anond:20191011152715 の続き。 その授業は全くといっていいほど、眠くならなかった。 先生は結局、自分の好きな作品語りで講義時間を使い果たしてしまった。ただ好きな著者や作品を語る...

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    • 終わり間際で女の先生とわかって結構驚いた。個人的体験から爺ちゃん先生を念頭に読み始めて、趣味がサバゲーって出てきて年齢は下方修正したけど、まさかそう来るとは。昔エアガ...

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