(ただし父や私の代はもう血が遠すぎて分家扱いもされていない、一般家庭)
私が幼稚園の頃、大規模な法要があって、初めて本家に行くことになった。
「みっちゃん!」
って叫ぶように呼ばれた。
びっくりして声の主を探すと、家の中から足袋裸足でおばあさんが走り出てきた。
そのまま駆け寄ってきて、私を頭のてっぺんからつま先まで見るおばあさん。
私はどうしていいかわからなくて、見られてる間ずっともじもじしてた。
そのうち、他の大人が割って入って、父はその人と一緒にどこかに行った。
私は他の子供たちと集められて、一緒に遊ぶことになった。
遊んでいるうちに法要は終わったらしくて、みんなでお昼のお膳を囲んだ。
さっきのおばあさんは忙しそうにしていたけど、合間合間に私や他の子供たちに
ご飯は足りているか、ジュースを飲むか、おしぼりを持ってきたから手を拭きなさい、
とたくさん話しかけてくれた。
その間にも、おばあさんからの視線を時々感じていたけど、嫌な感じはなかったと思う。
なんというか、すごく気にかけてくれているというか。
何回目かにジュースを勧められたとき、ちょうどお手洗いに行きたかった私は、
おばあさんに連れて行ってほしいとお願いした。
本家は古い大きなおうちで、ちょっと怖かったので、恥ずかしかったけど
おばあさんに、一緒についてきてくれるようにお願いしたら、
おばあさんはちょっと黙ったあと
「もちろん、いいよ。一緒に行ってあげようね」
と手をつないでくれた。
お手洗いからの帰り、おばあさんはなんだか涙ぐんでいた。
大人になって結婚する時に知ったんだけど、おばあさんは、本家の大奥様。
とても可愛がっていたんだだけに、亡くしたときの悲しみも深く
当時は後を追って死んでしまうんじゃないかという落ち込みようだったらしい。
おばあさんやその息子たち(=みっちゃんの兄たち)曰く
「顔立ちはもちろん、ものを食べる様子やちょっとした仕草がみっちゃんそのもの」
「まるで生き返ってきたみたいだ」
というくらいそっくりだったとのこと。
お手洗いに一緒に行った時に泣いていたわけも聞いた。
何でも、みっちゃんが亡くなる前日、
「怖いからお手洗いに一緒についてきて」
とお願いしたのを、その時ちょっと手が離せなかったので
「一人で行ってきなさい」
と宥めて一人で活かせたらしい。
「あの子が最後にしたお願いを、叶えてやれなかった。ちょっと手を休めてついて行ってやれば良かった」
とずっと悔やんでいたんだそう。
それがあの日、そっくりな私が現れて、みっちゃんと同じようにお手洗いについてきてって言い出して
「まるで、あの時のやり直しをさせてもらっているようだ」
と感じたんだって。
私が本家に行ったのはその一回きりだったんだけど
おばあさんはその後ずっと私のことを気にかけていたらしい。
とても他人とは思えないって。
おばあさんは、私が高校生の時に亡くなったそうなんだけど、その際に遺言で
「あのみっちゃんそっくりの子がお嫁に行くとき、お祝いを渡してほしい」
開けてみると、漆塗りの箱の中に櫛や手鏡、かんざしなんかが入っていた。
ほんとに貰っていいのかなって思ったけど、長男さんに
「供養と思って受け取ってほしい」
と重ねて言われたので、ありがたく受け取ることにした。
私には、子供に先立たれた親の気持ちは想像することしかできない。
でも、それは悲しくて切ない事なんだろうし、それをちょっとでも癒すことができたなら
(私の力によるところでは全くないんだけれども)
いいことをしたのかな、と思う。
昨日妊娠していることがわかって、ちょっと感傷モードに入っちゃったので
落ち着くために書かせてもらいました。
うっ。
おばあさんも増田と娘は別人だともちろん分かった上で 気にせずにはいられなかったんだろうねぇ。 いい供養をしたな。
ますだ〜お幸せに
ちょっとうるっと来た。
せつない。
おばあちゃんよかったねえ