「どちら様でしょうか?」
「あの、知り合いでは無いんですけど、Aさんのファンで…」
Aのことは知っている。友人、いや親友とも言っていい間柄だ。
随分前に彼が声優を目指すために上京した後も頻繁に連絡を取っているし
週イチで一緒にゲームしたり、都合が付けば向こうで会ったりしている。
台風が過ぎ去り雨も止んだので、家の周りを掃除を始めた時だった。
声を掛けようと思ったが、ツナギ姿で作業するオッサンが声を掛けたら
怖がられるかな…と思い無視していたのだが、5分経ってもそこを動かないので
流石にと思い、声を掛けてみることにした。
ここで最初の会話に戻る。
「チャイムが鳴ったので玄関に向かったら、ファンがドアの向こうに立っていた」
といったエピソードを思い出した。
当時は流石に嘘では?と思っていたが、あれは嘘では無かったのかもしれない。
自分でもまだ上手く考えがまとまっていないのだが、
彼女たちの行動は親切や優しさ、心配の範疇に収まっているだろうか。
実家を教えず、何とか説得して帰した自分は間違っていただろうか。
少なくともこの話を聞いた彼は怯えていたので、間違ってはいないと思いたい。
これは何も彼だけに限った話ではなく、ファンを抱えることになる人全員に
起こり得ることだと思うので、気をつけて欲しい。
小さい頃遊んでいた場所の話はしない方が良いと思う。