会社のそんなに親しくない同僚(Aとします)がパソコンを立ち上げたまま帰った。
LINEの通知がピコピコうるさいのでスリープをかけようとディスプレイを見た瞬間にLINEのポップアップが出て、条件反射で見てしまった。悪口だ。気になり過ぎてチャットルームを開いてしまった。同僚Aが友達のように付き合っている同僚Bとで共通の上司の悪口大会中だった。
慌ててウインドウを閉じたものの、些細な身体的特徴まで持ち出して悪口大会はヒートアップ。次々出てくる新着発言のポップアップをしばし茫然と眺めてからスリープさせた。
上司はまあ欠点もあるが美点もあり私は割とやりやすいと思っている。同僚A・Bは上司とはそりが合わず、上司とそりが合っている私とも当然そりが合わない。業務上はお互いさまで協力しつつ取り組めていると思っていたが、AとBはおしゃべり好きのタイプで、私と上司は無口。2人で私と上司の文句を言い合って楽しんでいるだろうことも想像していた。
想像してはいたし、内容もイメージを越えたひどさではなかった。それでもものすごくショックで、この時間まで何も手につかず、まんじりともせず、寝返りばかりうっている。
この衝撃はいくつかの段階に整理できると思う。
①自分はほとんど人の陰口を言ったことも聞いたこともないと思っている。喋り好きでもないし、臆病なので陰口をきくと震えが来るほどだ。そういう人間に陰口を共有しても楽しくないから周りの人も言わない。だからそもそも陰口をたたき合って楽しむさまを見るのがほぼ初めてだという衝撃。
②2人が特別悪い人間にも見えない(むしろいい人)のだから、みんな陰では悪口を言い合っている、そういう2面性があるのが普通なのではないかという推測。
③自分も自覚していないだけで、実は陰口を言っているのではないかという類推。
④その場にいない誰かの特徴を誇張して共有するのが面白く、エスカレートしてしまっているときは自覚としてもある。
⑤ということは、2人もそこまで悪意があるわけではなく、2人で罵り合うのが楽しくて言っているだけかもしれないという期待。
⑥ただ日常の行動に照らし合わせてみるに、2人は上司の上司に告げ口するような行動を取ることが往々にしてあり、悪意は本物。
⑦彼らは不平等を感じており、その埋め合わせをはかっていると感じる。2人に正義があるとしても、まず不平等を主張して是正をはからないのはなぜなのか。
⑧また②に戻るが、本当はみんなそうやって不満を抱えて発言はせず他人を悪く言っているのか?
⑨不満の発生源も悪いが、是正しようとしないほうも悪いのでは?陰口を言い合うにしても建設的な意見を出そうと思わないのか?
⑩そういう風に考える自分が心底いやだしこれも陰口じゃね?
こうやって書き出してみると小学生みたいな悩みだが、吐き出せば楽になるものだ。まあこれくらいの効果を期待して陰口を言い合うというのは世の中にはよくあることで、そこまで気にすることでもないし、まして建設的意見をとかいう口出しは無用なのだろう。と頭では考えられるが、すべての人を見る目が少し変わってしまったような気がする。
とにかくもう死ぬまで金輪際、人の携帯電話をチェックしたりするような真似はするまい。たいした関係でもない相手の、想像がついていた出来事、しかも別に誰も悪くない些細な事を確認しただけでもこれほどショックで、抱えていなければならなくなるのだ。まして家族や恋人の携帯から何か嫌な証拠でも見つけようものなら。でもこうやって事実を知る体験をしてしまったことで、チェックへの欲求はむしろ高まるのだろう。ああー、生きていくって大変。