2019-08-19

ソープ嬢はなぜそんなに冷たかったのか

上野入谷口。そこは、かつて北国へのターミナルであり、いまのぼくには天国へのターミナルであった。

夏の暑い日、ぼくは前日に続いてソープへ予約確認電話を入れていた。道行く人なんて誰も電話の内容なんて聞いていないはずなのに恥ずかしかった。

電話の向こうの店員は、想定外のことを言った。

「予定より早くご案内できますが、来れますか?」

逡巡があり、すべてを予定通りに進めたいと伝えた。重度のあがり症なので、予定外のことは避けたい。

予定時間になった。就職面接プレゼン上司説教、そのどれよりも緊張していた。

お店に着いて、手続きを済ませると待った。内科病院の待合室よりは緊張感があり、精神科病院よりはリラックスしている集団がいた。

10分待った。一緒の車で来た同志が消えた。

20分待った。みんないなくなった。

30分待った。次の送迎が来て、また消えていった。

40分待った。大丈夫だろうか、忘れられていないだろうかと心配になってきた。

結局、予約時間に来てから時間近く待って、ソープ嬢とご対面であった。

ネット調査は完ぺきだったはず。複数口コミを見て高評価なはずだった。

しかし、愛想がいい、接客が丁寧、優しい、そんな御託はすべて嘘だった。

全ては滞りなく進んだ。お姉さんのつっけんどんな態度とむすっとした表情を除いて。

なぜだろう、特に会話をすることもできなかった。彼女はずっとあくびをしていた。

挙句の果てに、スマホ見ていい?なんて言ってずっとLINEを見ていた。

おかげて、スマホをじっと見ている女性を至近距離でじっと見ているプレイをする羽目になった。

なぜか寿司食べたいと連呼していた。お茶も出してくれなかったのは、どういうわけなんだろう。

帰り際、早く帰れのオーラを感じて扉の前に立った。彼女は鏡を見やると、「あ、つけまつげ忘れてた」とつぶやいていた。

扉を開けた瞬間、変わった。

ありがとうございました~!」というオクターブ高い声でニコッと笑ってお見送りだった。視線の先には店員さんがいた。

刺激的な夏の日差しオレンジ色の夕日に変化していた。ムッとした外気を感じ、送迎車で現実に連れ戻された。

いったいなぜ、あんなに冷たかったのか。笑えない酷い仕打ちだった。

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