2019-08-11

篠房六郎先生の持ち上げられ方の悲惨

私はかつて映画漫画についてエントリを書いた。

そこそこブクマをいただいた。これだ。

https://anond.hatelabo.jp/20180823115109


そこで最初に取り上げてるのが篠房六郎先生おやすみシェヘラザードだ。漫画の出来については決して誉めてはいない。篠房先生個人については期待している。そんな感じが伝わるレビューだと思う。


要するに私は今回急に軽薄に篠房先生を持ち上げているサヨク達よりはよほど昔から篠房先生を知り、その作品作家のものとに視線を向け続けているということだ。

先生ムサビ在学中で同級生ネタ漫画描いてた頃から知っている。先生が近年漫画アニメについて先走り気味なレビューをするたび先生よりずっと物知らずなオタクたちがめちゃくちゃ叩くのを苦々しく見てきた。


それはそれとして先生漫画家としてのキャリア能力の停滞具合にはもどかしい気持ちをずっと持ってきた。四季賞をとった作品はよかったのに、そこから全然伸びない。


わたしはこれを乱暴一口にすれば「パンツ脱げないから」だと思っている。同じアフタヌーンの歳の近い作家で、木尾士目四年生五年生のあとげんしけんを描いた。ひぐちアサはヤサシイワタシのあとおおきく振りかぶって!を描いた。

二人とも、あえて慎重さを欠く言い方をするけれども、「成長した」のだ。自意識の中をひたすらぐるぐるするところから外に出た。

四年生もヤサシイワタシも若い人にしか描けないその頃の傑作ではあるが、その後に描いている漫画のほうが他人がいる。他人のことを無視しなくなっている。弱々しい臆病さがなくなり、他人にはだかを見せられる大人になっている。


篠房先生はいつまでたってもこれができない。二十歳そこそこの頃に空談師という閉じきってるのに社会をわかった気になっている漫画を描けたのはよかったのに、40代になってもそこからの成長がない。

描く漫画ますますバカらしいほど読みにくくなり、出てくるキャラのしゃべり方や呼吸は全部当人脳内だけを材料にした貧しいもので、友達のいない人が自分の中で煮詰めすぎてしまりのない味になったものをデロデロと皿に垂らすような作品になっている。


たぶんこの人は幅広い友人を持たなかったのだと思う。友人が居なくても客観的で余裕のある妄想を出来る人もいるが、篠房先生はそのタイプではなかった。描く絵も描くネームもすべてが自家中毒。こつこつ頑張る性格が悪い方へいっている。


いつもお絵描き講座のような自分のためのメソッド開発に勤しんでいるが、この人ほど「努力」をしてなくてもこの人よりいい絵を描く漫画家はごまんといる。

最近も新しいメソッドを開発したとはしゃいでいたが、独特の癖のある首のつきかたなどは全くなおっていない。彼のキャラはみんな首に変な緊張感があり、肘のはりかたや手首の角度まで全て強烈なくせがある。


絵を進歩させたかったらメソッド開発という自家中毒鍋を煮詰めつづけるより他の漫画家の絵をたくさん模写してみればいいのに、ずっと自分の絵を見て絵を描いている。


お分かりのように私は異常者だ。それほど売れてない漫画家にこんな風に余計なお世話勝手検討をし続けている人間だ。

他にもこんちき先生についてもかつて余計なお世話エントリを書いた。https://anond.hatelabo.jp/20180327221003

おりたたぶの新連載はとても嬉しい!テレたこなし感がない全力を一般で見せてくれていて感無量だ。みんなも読んでほしい。よい漫画だ。


それで本題に戻るけれども、私はずっと篠房先生パンツを脱いで、他人を受け入れて、時代遅れな「うまくやれないオタク自意識言い訳世界から飛び出して、面白い漫画を描いてくれる日が来るのを待っていた。

元々若くして四季賞を取るほどの麒麟児だったのだから問題は素質ではないと思っていた。

それで今回のチマチョゴリエヴァだ。

くっだらない。

こんな下らない、おまけにへったくそな絵で賞賛されて。おまけにきちんと仕上げてすらいない。(それすらわからない目の人は少し拡大してみればよろしい)

自分本業でくすぶって人間ほどTwitter政治にのめり込む現象理由理解できた。

コツコツ頑張ってきた本業よりはるかに激しいレスポンスという飴がもらえるんだもん。自制心が強くない人間政治戦士になってしまうだろう。


どんなにつまんない人間のままでも、成長なんかなにもしなくても、くっだらない絵でも、その絵すらきちんと描いてなくても、アスカの首がどうかなっちゃってても、誉めてもらえる。

コツコツ仕事で頑張る時の百分の一以下の労力で。出来なんかどうでも同じ党派の人から肯定されて、人格まで誉めてもらえる。これはすごい飴だ。


百歩譲ってなんの才能もない見込みもない作家政治戦士になろうが白ハゲ漫画家になろうが当人勝手だとしても、篠房先生にはこんなイージーで腐った飴の味を覚えてほしくなかった。

記事への反応 -
  • もちろんそういう趣味自体は否定しないから「アナルセックス特集号」とか「アナル専門作家」とかいうことでやっていくなら文句はない。 けど普通のエロ漫画誌にアナルセックスを混...

    • 私はかつて映画漫画についてエントリを書いた。 そこそこブクマをいただいた。これだ。 https://anond.hatelabo.jp/20180823115109 そこで最初に取り上げてるのが篠房六郎先生のおやすみシェヘ...

      • 実人生がさえない人間でも政治活動すると同志からちやほやしてもらえる、っていうセーフティネット構造は確実にあるよなあ

      • 褒めてる人間があの絵の下手さや雑さに誰も言及しないのが本当に気持ち悪い。 「思想に賛同するけどこの絵は微妙だね」という人間がいたらそいつのことは全力で信用するんだけどな...

      • 瀬川新先生「呼んだ?」

    • 我もそう思う

    • まるで蕎麦屋にアナルを責められたかのようだ。

    • 好きなエロ漫画家教えて

    • すごくいい記事だとおもう、エロ描いてるのに恥があってはいけないのだなと思いしされた 俺も精神的に自立して恥ずかしげもなくエロいものをかけるようになりてえ

    • 追記読んだけど我もそう思う

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