夜のマック。
背中合わせの席で母親が小学生くらいの息子に何やら説明を繰り返している。
客は自分とこの2人しかいないので、自分の意思など構うもんかと会話が耳に入ってきた。
どうやら母子はこれからそれぞれ別のところにいかなくてはならないらしく、母親は息子に行き先を説明しているようだった。
よほど時間がないのか、急いだ様子で店を出てから数回しかない曲がり角を何度も何度も繰り返し説明していた。
そんなに心配なら送っていっても良いかとも考えたが、むしろ母親が心配しているのはそういうことだろうと何も言わずにマックシェイクのストローをくわえこんだ。
「じゃ、いける?」やっと納得がいく説明ができたのか母親がそう言うと、息子はすかさず大声でこういった。
「まくそん!!」
何のこと?と一瞬の沈黙の後、がらがらの店内に母親が息子の頭をひっぱたく音と、僕の鼻からマックシェイクが吹き出す音が同時に響いた。