街中で知らんオッサンが吐く煙の臭いがいつも嫌いだった。今も嫌い。臭い煙を吐くオッサンの人権を認めたくない。
そうやってずっと死ぬまで、煙草は嫌いだと思っていたのに、喫煙者になった。
昨日の夜初めて吸ったので、喫煙者、ではまだないかもしれないけど。
コンビニでライターが置いてあるところ探して、買って、煙草咥えて、火つけて、煙を口に入れて、吐いて、そこそこ短くなるまで燃やして、ぐりぐり消して、そのへんに捨てた。
好きな男がいつも吸ってるという煙草を持たされたので、そこまでやった。
正直普通に臭いし、おいしくないし、喉痛くなったけど、ホテルで染み付けてきたあのにおいが口の中にあるだけで、ゾクゾクした。
においってすぐに忘れるのに、嗅ぐと鮮やかすぎる記憶で泣きたくなる。男の日常を全身に染み付けて喜んで、匂いが取れるからお風呂に入りたくないとか、残念ながら本当に感じてしまった。
助手席乗ったしホテルも行ったけど、付き合っちゃったら違う気もする。
背徳まみれの出会いで、あだ名しか知らなかった関係で、次会うのは来年か、もう一生会わない。
一人で煙草に火を付ける夜が週に一度くらいあって、そのうち煙草切らして、忘れた頃に街中でまたピースの匂いに出会いたい。
強い煙草とは聞いてたけど、家に帰ってから調べたら、どうやらかなりヘビーなやつで、初めてじゃまず有り得ない銘柄だったらしい。