2019-05-05

先生と私

20歳以上も年上の先生に、心を奪われた。

私は、それなりに不真面目な大学生だ。人の中で生きるのが下手なまま、自分でもどうにかなる道を人に流されながら生きてきた。そんな中、一年前に先生出会った。

最初は興味など毛ほどもなく、大教室で受けた先生の授業はあまり聞く気が起きなかった。何より私は目が悪く、遠くにあるプロジェクターに映された映像や、先生の顔を見ることができなかった。見ようとも思わなかった。眼鏡コンタクトレンズ越しに世界を見ることが勿体無いことのように感じていたので、意地でも眼鏡をかけなかった。私は授業をろくに聞かず、期末テスト適当に受けた。元々その授業の科目に詳しかった私は最高評価の成績を頂き、ああ楽だったなと思った。それだけだった。

そんな中、隣の席で私より真剣に授業を受けていた友人が、こう言った。

「あの先生、すごくかっこよかったよ。」

そんなバカな、と思った。私は似たカテゴリの授業を当時もう一つ受けていたのだが、その先生が厳しい口調で険しい顔の人だったので、どうせ同じような人だろうと内心勝手に決めつけていたのだ。私は友人に先生写真を見せてもらった。先生は、知的美少年をそのまま大人にしたような、ミステリアス紳士のような顔をしていた。特別私は面食いではなかったので、へえ、かっこいいんだなあと思って、本当にそれだけだった。相変わらずそこまで興味は湧かなかった。

それから一年が経った履修登録の時期、友人はまだその先生のことを気に入っていたようだった。私もよく友人から話を聞いていたので、ほとんど関わりのない先生の印象が、なんとなく面白い人という風に固まっていた。そんな中、その先生の別の授業を見つけたのだ。目の保養になるだろう、なんてことを考えながら、私は友人と軽い気持ちでその授業を履修した。

最初は、ああ想像通りの人だなと思った。物腰が柔らかく、自分の好きなものの話を嬉しそうにする、少し抜けたところのある先生だった。特別嫌な授業じゃなくてよかった、そんな気持ちで授業を受け続けていた。

だがある日、それはなんのきっかけもなかった。何もない普段通りの授業の日、私は授業を受けながら罪悪感のようなものを感じていた。先生が足を動かして、その手で黒板に文字を書いて、優しく言葉を紡ぐたびに胸がざわざわした。私は授業を受けにきている、この場に学びに来ているだけなのに、この人に褒められて、甘やかされて、抱きしめられたいと思った。その気持ちと後ろめたさで、モヤモヤした気持ちのまま授業を終えた。

私は小さい頃から父親と過ごす時間が多くはなかった。父親が家にいても、よく母を怒鳴っていた。もちろんものすごくお世話になっているし、ここまで育ててもらって大学にも通わせてもらっている。そのことに感謝はしているが、理不尽に怒鳴ったり、人を馬鹿にして人格否定をしたり、母には厳しいのに私には君が悪いくらい甘いところがあるのがどうにも受け入れ難く、いつから父親との接触を避けていた。

父親が苦手な女性母子家庭で育った女性は、父親から愛情を受け取れなかったため、父親と近い年齢の男性にそれを求めることがあると聞いたことがある。要するに、そういう環境で育った人は、うんと年上の人を好きになりやすいのだ。私は先生父親の代わりにしたいのだろうと勝手に思っている。先生は優しい声で、とても丁寧に喋ってくれる。人を怒鳴ることもないし、大きな音を立てることもない。立ち振る舞いは上品で、私たち身体を無遠慮に触ることもない。嬉しそうに微笑む先生を見て、私は胸が切なくなったし、同時にこの人がお父さんだったら、そう思った。

私はなんとなく、これが恋愛感情に近いものだと感じている。同時に、先生自分を甘やかしてくれるような父性を求めている。同年代恋人父性を求める人はいると思うが、先生は私よりずっと年上の人だ。私は本来、父にこういうものを求めていたのだろうか。そう考えると、自分気持ち悪くて仕方がない。この気持ちが、恋であってほしくない。ただ仕事上私に接してくれているだけの人にこんなことを求めるなんて、自分は本当に勝手だと思うし、向こうは思わせぶりなことをした訳でもない。ただ優しい人であるだけだ。こんなよくわからない気持ちを向けられても困るだけだろう。私は自分が受け入れられない。

先生言葉を交わしたことは、ほとんどない。先生にとって私は有象無象の一つだろうから、もし万が一お付き合いしても年齢がだの責任がだの周りの目がだの、そんな心配は要らないものなのだろう。だがそんな妄想一喜一憂しながら、これが恋なのかそうでないのか考えあぐねている。

私がどうするべきかはわからないが、ただこれが恋だとしたら、実らない方が幸せになれるのだろうなと思った。

  • anond:20190505222500

    ぬいぐるみペニスショックで怒ってる人たちへ - Togetter https://togetter.com/li/1291530

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