一見して光るものを、今のところ、この人の絵に見出せないけれども
努めて一心に描き続ければ、個性はそのうちに開くのではなかろうか
あと、その本領をあくまで銭湯絵というさだまった枠に限るならば
実際の需要に堪えるだけの地力を身につけた時点でまあ食べて行けて
比較的、専業の画家としてやっていくことのハードルは低そうなので
ひとまず一人前の銭湯絵師と認められてから我流を得ればよかった
でも、今回の盗作はどうしたって過ちというほかに言い様が無いよね。
この人の容姿がすぐれて自分の好みを射ているので、軽蔑し切れず
ひいき目からおもいついた擁護を手短に述べると以下のようになる
たぶん、この人は芸術家の真剣さをもって絵に向き合ったことがない
自分の絵が他人を喜ばせることに満足する域をいまだ脱しないようだ
これを自己顕示欲と見做すのは確かにまちがってないと思うけども、
銭湯絵師のような職人には、純粋な創作衝動が必要なわけではなく
お客さんの注文に応じられるだけの技量がそれに先んじて求められる
つまり、その技術さえあれば、注文した人を満足させられる筈なので
他に類を見ない個性というものを伴わない自己顕示が、よく成立する
また、これは紛い物でも三流でもなくれっきとした生き様になりうる。
が、恐らくこの人はマジメに芸術家を志しているのではなかったから
他人の作品の構図、意匠、いやそのものの剽窃に対する感覚が無い
どうだろう、落ちていた百円を拾う位の罪悪感があればいいほうかな
それはサイコパスっていうよりも、謂わばしろうとの能天気にみえる
悪いことには違いないけれども、なんというか、邪悪では無さそうだ。
とはいえ、言い尽くされているように、これは明らかに悪いことだ
絵を仕事にするはずの人間の心がけとして、致命的と言うほかない